新日軽は2008年秋、構想から4年間かけた基幹系刷新プロジェクトをほぼ終了した。これまでビル向け、住宅向けなど事業間で重複していたシステムを同じ考え方の下に整理。同時に販売・生産調達・購買など同社のすべての業務を見直した。新システムのリリースに先んじて業務改革を進め、サービスインと同時に効果を享受できるようにした。<日経コンピュータ2008年12月15日号掲載>

 「新システム完成後の業務フローはすでに決まっている。それならば、システムを稼働させる前に業務フローを新しいものに変更したらよいのではないか」―。2006年半ば、次期基幹系システムの開発真っ最中にあった新日軽では、会社のいたるところでこうした考えに基づいたカイゼン活動が始まっていた。

 例えば、新しい受注システムが出来上がる前に、新システムを想定した承認フローに変えた。調達における業者選定の仕方も変えた。業務改革とシステム導入を同時に実行する企業は多いが、システム稼働する前に新システムを見越して業務フローを変更するのは珍しい。

 「システムを作ることが目的ではなく、構造改革が目的である」。言ってみれば当たり前な思想を貫いた結果、同社がたどり着いたプロジェクトの進め方だった。

構想から4年、基幹系を総入れ替え

 新日軽は2008年秋、構想から含めると4年の歳月と約30億円をかけた基幹系刷新プロジェクトを終えた(図1)。「まだ各工場への展開と一部機能のリリースは残っているが、主だった開発作業部分についてはこれで一段落着いた」と四方晃情報システム部長は話す。

図1●新システムでビジネスと旧システムの課題を克服することを狙った
図1●新システムでビジネスと旧システムの課題を克服することを狙った
[画像のクリックで拡大表示]

 今回のプロジェクトの範囲は幅広い。会計・人事を除くほぼすべてのシステムが対象だ。ものづくりに直結する設計、計画、受注・生産業務に加え、商品開発と原価計算のシステムを含む(図2)。

図2●新システムの構成
図2●新システムの構成
[画像のクリックで拡大表示]

 刷新の目的は、業務上の課題とシステム上の課題を同時に解決すること。業務面では、全社的に業務のやり方を変える構造改革の達成が目的。構造改革の成果を確実なものにするために、システムの稼働を待たずに業務フローの変更を先行して進めた。同時にシステム面では、事業ごとにバラバラだったマスターデータを統一した。