日立製作所がNGN(次世代ネットワーク)の通信サービスと企業のWebサービスを連携させるためのソフトウエア「NGNアプリケーションアダプタ」を開発した。Webアプリ開発者がNGN通信機能を簡単に使えるようにする。同様のコンセプトの従来品は通信事業者向けで,企業が導入するタイプの製品はなかった。
NTT東西のNGNの売りの一つとして,NGNの通信機能と外部アプリケーションを連携させて様々な新しいサービスを実現できることが挙げられる。しかし今のところNGNは,光アクセス回線やIP電話,ベストエフォート型の低料金IP-VPNなどにしか使われておらず,企業向けの新しい利用方法が開発されている状況とは言い難い。
その要因の一つには,NGNの通信機能とWebアプリの連携の難しさがある。WebアプリでNGNの通信機能を利用する場合,NGNのベースとなっているSIP(session initiation protocol)を使ってアプリを構築する必要がある。しかし一般的なWebアプリの開発者にとって,SIPを使ったアプリ開発は難しい。
こうした課題は以前から認識されており,それを解消する手段として,通信事業者のサービスをWebサービス側から利用するAPI(application programming interface)である「Parlay X」の標準化が進められてきた。
それらを実装したゲートウエイ製品も作られている。その代表例がNECの「NC7000-WS」だ。ただしこれは通信事業者の網内に置いて利用するタイプの製品で,企業ユーザーが手軽に使えるものではなかった。
顧客とセンターを二つの呼で結ぶ
こうした中,企業が手軽に使える「NGNアプリケーションアダプタ」(以下アダプタ)を日立が開発し,この2010年1月に販売を開始した。価格は210万円から。出荷は3月の予定である。
アダプタは,サーバー・マシンで動作するソフトウエアである。外部からParlay XベースのAPIを呼び出すと,アダプタはそれに対応する複雑なSIPの手続きを実行する(図1)。基本コンセプトは,既存のゲートウエイ製品と同じだが,この製品の特徴は通信事業者の網内ではなく企業側にサーバーを置く点にある。企業のサーバーに音声データを引き込むことで様々な応用が考えられる。