当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。第6回から「可視化指標によるIT部門の恒常的なパフォーマンス改善」について説明してきました。今回は総集編として、「IT部門のパフォーマンスに寄与する五つのKPI」を使った実運用プロセスについて、具体例を交えながら説明します。

 前回は、「IT部門のパフォーマンスの可視化」のための五つのKPIのうち、「工数管理」と「受注残管理」について説明しました(図1)。

図1●IT部門における管理指標となる五つのKPIの例
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 「工数管理」と「受注残管理」は、「生産性管理」「品質管理」「サイクルタイム管理」という主要KPIを支える補助KPIとしての位置付けです。標準納期に対する実質納期を見ることで、それぞれの工数の中に潜んでいる課題を撲滅できます。また、「今サービスリクエストを受けると、いつその要求を提供できるか?」という意識を常に持って活動することの重要性が理解いだけたかと思います。

 当研究所の連載コラムを通して読まれた方の中には、既に自部門・担当業務のサービスカタログを完成させ、VAP(付加価値ポイント)をそれぞれのサービスカタログ項目に付け終わっているかもしれません。繰り返しになりますが、重要なことは、サービスカタログを作成した段階で、「社内顧客の視点」からVAPをアサインすることです。

ITILにも顧客視点の考え方が追加

 読者の中には、部門におけるサービス提供の総合的な“質”を高めるために、ITIL(ITインフラストラクチャライブラリ。英国で生まれたIT部門のサービス提供フレームワーク。今では実質的な国際基準としての指標導入が定着している)を自部門プロセスに導入し、構成管理や変更管理、インシデント管理、リリース管理、問題管理などをしているかもしれません実行しているかもしれません。

 ITILのバージョンIIIでは、サービスカタログに顧客の視点でIT部門が考える「顧客サービスカタログ」の考え方が追加されています。ちなみにバージョンIIまでのサービスカタログは、ベンダー企業やサービスプロバイダーとIT部門のためのサービスカタログ化を示していました。

 みなさんも、部門内のサービスカタログ化が終了した時点で、それぞれのサービス項目について、社内顧客がどう考え、それぞれに価値を感じているかを、社内顧客の視点から議論しながら、VAPを決めてください。

 ここでの重要なポイントは「顧客が誰なのか?」「顧客に見えるサービスとIT部門内の工程の切り分け」「IT部門の現行の工数(コスト)にとらわれない、あくまでも社内顧客の視点での価値判断」です。

 提供サービスに対して、定義とVAPが決まれば、これらサービスを生成する「インプット」と「プロセス」を定義します。「インプット」としては、これらサービスを生成する「社内顧客からの要求の入り口」をサービス依頼書以外の入り口も含め、サービスごとに定義してください。

 具体的には、「ヘルプデスクの2次対応」「社内顧客からの直接のコンタクト」「電話での依頼」などが挙げられるでしょう。これらの「インプット」を、できるだけ漏れることなく定義します。そして最後に、各サービス項目を生成するプロセスを分析し、サービスを提供するまでの所要時間から「標準時間」を定義するのです。