NTTデータと野村総合研究所(NRI)は、「ITと新社会デザインフォーラム2010~日本が変わる。ITが創る。」と題したイベントを、2010年2月26日に共同で開催した。ITサービス業界を変革させるための提言の第一弾を発表するためだ。日本のITサービス産業の未来、自分が所属する会社の将来を考える上で、多くのITプロフェッショナルにとって参考になるものである。
業界大手2社の思いが一致
そもそもNTTデータとNRIというライバル同士が手を組んだのはなぜか。両社の経営トップの思いが一致したためである。共有している考えはこうだ。
「現在、グローバルな社会や事業環境の大きな変化に直面し、日本の社会、そしてあらゆる産業が転換期にあると言われています。この日本全体を覆う困難の打開に向けて、ITで貢献していきたい。この困難な時期を、私たちITサービス産業にとって、自らを変革し、産業の魅力を高めていくための機会としていきたい」。
「日本の諸課題にITサービス産業は貢献できているか」との問いかけに、「イエス」と即答できる産業になれていない。こうした現状に対する危機感が両社を突き動かした(図1)。
両社の取り組みに対して、「ITサービス産業の発展のことしか考えていないのではないか」と感じる読者がいるかもしれない。だが、それは当たらない。
「ITサービス産業が変革すれば、日本・企業が抱える課題の解決に貢献できるようになり、国家や他の産業の競争力向上に今以上に寄与できる。それが、ITサービス産業の地位や魅力の向上という結果となって返ってくる」。両社はこう真剣に考え、ITサービス産業の問題点を洗い出し、変革への提言をまとめた。
「社会」「業界」「職業」で問題点を整理
変革への提言の中身を見る前に、両社の問題意識を押さえておこう(図2)。両社はITサービス業界の問題点を、「社会レベル」「業界レベル」「職業レベル」の三つに分け、これらを同時に議論した。三つを個別に議論していては、業界変革につながるダイナミックなアイデアが出てこないと考えてのことである。
社会レベルの問題とは、「日本の社会、そして産業の転換期である現在、存在する多くの社会課題に対して、ITサービス産業は、私たちならではの解決策の提案を十分に行ってきただろうか」というものである。
業界レベルの問題点はこうだ。「確立された顧客ニーズ主導の受身的なビジネススキームや、システムの大規模化・複雑化への労働集約的な対応を継続してきており、事業の付加価値を高めるためにビジネスモデルを変革することへのチャレンジが遅れているのではないか」。
「『3K』と揶揄(やゆ)されることもある職業としてのIT技術者やシステム開発の現場をなんとしても変えていきたい。ITサービス産業にかかわる人たちが魅力を感じ、誇りを持って働き続けられる職場を実現しなくてはならない」。これを職業レベルの問題点として挙げている。