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日経コンピュータ

変貌する社会インフラにITを組み込もう

2010/03/11
吉田 洋平=日経コンピュータ

 提言の一つめは、日本の社会インフラを救うためのIT活用方法を世に発信していこうという内容だ。野村総合研究所(NRI)の執行役員である三浦智康コンサルティング事業本部副本部長が、「ITと変貌する社会インフラ」と題して講演した。早晩、財政難により社会インフラは危機を迎える。この「インフラクライシス」を回避するための解決策を提示し、それを実現することがITサービス産業の使命になる。

野村総合研究所 三浦智康執行役員
野村総合研究所 三浦智康執行役員
(写真:吉田 明弘)

 「ITサービス産業は、これまで社会が抱える課題を解決するために何か役に立つことをしてきたのだろうか。議論を始めた当初は、そのことから考えた」。三浦執行役員は、今回の提言策定活動をこう振り返る。

 議論した結果、日本が抱える代表的な課題として、社会インフラに注目した。ITサービス産業は、社会インフラが機能しなくなる「インフラクライシス」の解決に貢献すべきである、ということである。

 インフラクライシスとは、老朽化したインフラ(電気、ガス、上下水道、交通、建物など)が、“崩壊”することを指す。上下水道管の破裂や橋梁の落下事故、建築物の壁面落下などである。

 「ITを駆使すれば、インフラクライシスを回避できるだけでなく、生活者にとって便利な社会インフラを作ることが可能」(三浦執行役員)である。

ITなしにはインフラクライシスを防げない

 日本では耳慣れないインフラクライシス。既に欧米ではインフラクライシスに直面しているという。

 現実化しているインフラクライシスの例として、米ミネソタ州ミネアポリスで2007年夏に起きた橋梁崩壊を挙げた。ミシシッピ川に橋が陥落し、死傷者が90人以上という事故だ。2005年1月のイタリア北部ボローニャで発生した、旅客列車と貨物列車による正面衝突の事故についても触れた。

 「日本では多数の死者を出すような大きな事件は起きていない。だが、名古屋市や八戸市で水道管が破裂するなど、社会インフラの機能が確実に低下していることに目を向けるべきだろう」。三浦執行役員はこう指摘する。さらに「日本は1960〜70年代に社会インフラを集中整備した。その時期に作ったインラフが老朽化し、更新するタイミングが2010年以降にやってくる」と続ける。

 古くなった上下水道や道路、橋梁といったハードを作り直せれば問題はないが、国や自治体は財政難に陥っている。現時点では、インフラの再整備に必要な資金を集める方策は見当たらない。金がないからと老朽化したインフラを放置してしまえば、インフラクライシスが起きる。最悪の場合、生活者は死亡する。

 インフラクライシスを回避するためには、限られた予算を効率的に使う必要がある。その方策の一つが、「コンパクトシティ構想」という考えで都市を設計することだ。

 「街を集約し、人や資産を集中させる。こうすれば、投資が必要な社会インフラ自体を減らすことができる」(三浦執行役員)。NTTデータとNRIはコンパクトシティ構想を実現するため要件として、「コンパクト」「クリーン」「コンビニエント」「コラボレーティブ」「クリエーティブ」を挙げる。

 五つの要件を満たすには、ITの利活用が欠かせない。「コンパクトな都市を持続的に成長させるためには、地球環境への配慮(クリーン)が必要になる。さらに様々な人種・世代を問わずに便利(コンビニエント)で、皆が協働(コラボレーティブ)しやすくなることを意識した都市作りが重要だ。こうした取り組みを通じ、創造性豊か(クリエーティブ)な街ができる。これらはいずれもITを駆使すれば、実現しやすくなる」。三浦執行役員はこう語る。

 日本でも既にコンパクトシティ構想の実現に向けた取り組みが始まっている。三浦執行役員は青森市を例に挙げ、こう述べた。「青森市は、あるところで線を引き、『外側ではあまりインフラに投資できないので、なるべく内側に住んでください』と住人に訴えている。これにより、除雪作業の範囲を狭めて財政負担を減らそうとしている」。

>>インフラの統合マネジメントシステムが重要に
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