地域住民の生活支援にITを活用する試みが、千葉県柏市の柏の葉地域で始まっている。育児や就業支援、地域案内などに、小型の情報端末やICタグ、GPS(全地球測位システム)、ICカードといった技術を役立てる。今後の地域社会において、ITをどのように活用すれば生活しやすくなるかを探り出す。

 今回の試みは、総務省の「地域ICT 利活用モデル構築事業」の一環で、予算額は1億9000万円。市内北部にある柏の葉地域の住民と、同地域を訪れた一般個人に、複数の試験的サービスを提供する。2010年2月15日からの約1カ月間、野村総合研究所、パナソニックシステムソリューションズジャパン、日立製作所が共同でサービスを提供し、その利用状況と効果などを検証する。

 サービス内容は、大きく2種類ある。一つは育児支援に関するサービス。もう一つはICタグやGPSを使って地域情報を配信するサービス群だ。

子供の送迎者を指静脈で認証

 育児支援関連サービスの中核になるのは、「かしわ あぃあぃ広場」と呼ばれるポータルサイトである。アカウントを登録して会員になれば、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)や掲示板が利用できる。また同ポータルサイトからは、「送迎・あずかり支援サービス」「デジタル連絡帳・伝言板サービス」「子どもの見守りサービス」の三つのサービスも利用可能だ。

 送迎・あずかり支援サービスは、子供の送り迎えを代行するもの。一定時間預かることもある。親が仕事などで子供を送迎できない場合に、Webサイトから代行を依頼する。地域の協力会員がその情報を参照し、代行を引き受けることを返信する。当日の依頼にも対応する。

写真1●子供を迎えにきた協力会員を指静脈で認証する
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 実際に子供を迎えにくる協力会員が、本人かどうかを確認する手段として、指静脈認証システムを使っている(写真1)。市内の保育園など6カ所に、パソコンと指静脈認証デバイスを配布する。

 同様のサービスはこれまでも、柏市福祉協議会が運営する「かしわファミリー・サポート・センター」が提供していた。だが、依頼や受け付けの手段は電話だけだったうえに、サービス利用の1週間前までに申し込む必要があった。

小型端末でメールを送受信

写真2●手入力した文字は画像としてメールに送られる
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 「デジタル連絡帳・伝言板サービス」は、子供でも簡単に使える端末を用意し、学校と家庭のコミュニケーションを活発化するもの。LinuxベースのOSを搭載する小型端末「Chumby」(米チャンビー・インダストリーズ製)を22台用意し、試験サービスを利用する家庭に配布する。柏市田中小学校の1年生と3年生の22人が利用する予定である。

 Chumbyは、学校からの連絡事項を表示する機能やメール受信機能などを搭載する。画面がタッチパネルになっているため、パソコンなどより使いやすいのが特徴だ。キーボードはなく、手書き文字を画像として保存する。それをメールで送信すれば、携帯電話などからも参照できる(写真2)。