米Intelは、社内パソコンの「Windows Vista」へのアップグレードを見送って「Windows XP」のまま使用していた。これらすべてのパソコンを「Windows 7」へ移行させると2009年に発表して話題を呼んだ。ところが同社は現在、計画の見直しに迫られている。後半では、米Microsoftに対する見当違いとしか言いようのない提訴を米連邦裁判所が棄却した件についても紹介しよう。

Take1:8万人のXPパソコンを64ビット版Windows 7に移行

 Intel社内のパソコン・ユーザーは8万人以上おり、その多くが今も管理者権限でWindowsを使っている。しかも同社は全パソコンを64ビット版Windows 7にアップグレードする計画であるため、古いアプリケーションの一部で互換性問題が懸念される(大昔の白亜紀から現在まで使われ続けている16ビット・アプリケーションは特に深刻だ)。

 さらに、今さらだが「Internet Explorer(IE)」も難題だ。多くの大企業と同様にIntelも、(今にして思えば判断ミスだが)時代後れのIE 6でないと使えないWebアプリケーションとイントラネットを大量に作ってしまった(関連記事:YouTube、IE6などのサポートを2010年3月に終了英国政府にIE6からのブラウザ・アップデートを要請する署名活動)。

 つまりIntelは、大企業が必ず悩むのと全く同じ移行問題に直面している。Intelがこの問題にうまく対応できないとは驚きだ。

 ただし明るいニュースもある。Intelのエンジニア、Roy Ubry氏はブログ記事で、このOS移行計画についてこう述べている。「Windows 7に移行すれば、今後3年間で運用コストを1100万ドル削減できると見込んでいる。また、Windows 7に早期移行した社員の97%が『同僚にWindows 7を勧める』と話している。現在のところ計画は順調だ」(同氏)。どうやら問題は解決に向かっているらしい。

 いずれにしろ、白亜紀から2010年へようこそ、と言っておこう。

Take2:Microsoft、「Windows XPダウングレード」訴訟で勝訴

 米連邦裁判所は2010年2月最終週、米Microsoftに対する見当違いとしか言いようのない提訴を棄却した。担当判事は、Microsoftの提供している「Windows XPダウングレード権」が独占禁止法の違反に当たらないと判断した。

 この判決は、Emma Alvarado氏が1年前に起こした訴訟において出された。同氏は「Microsoftが、本来Windows XPを希望している消費者に『Windows Vista』プリインストール・パソコンの購入を強要した」と主張し、裁判ざたにしたのだ(関連記事:マイクロソフト,VistaからXPへのダウングレード方針で提訴される)。

 ところがMicrosoftやWindowsパソコンのメーカーは、Windows Vistaパソコンの購入者に漏れなくWindows XPへのダウングレード手段を用意している。判事はこの点が訴えと矛盾するとした(関連記事:XPへのダウングレードサービスが再び延長マイクロソフト、Windows 7の「XPダウングレード」を認める方針)。

 係争の舞台となった米連邦地方裁判所のMarsha Pechman判事は判決のなかで「Alvarado氏は、追加支払いなしでWindows XPへのダウングレードを選択した(しかも実際にダウングレードした)。結果的に同氏は、製品1つ分の価格で2種類のMicrosoft製OSを手に入れたものとみなせる」と述べた。見事な判断だ。