今回と次回はtracert(トレースルート)コマンドを取り上げる。tracertコマンドは,通信のあて先となるホスト(サーバーやネットワーク機器など)までの通信経路を表示するコマンドである。
tracertコマンドは,前回のping(ピング)コマンドと同様に,ネットワーク・トラブルの際によく使われる定番のコマンドである。
あるサーバーにだけつながらないといったトラブルが発生したとする。そのサーバーに向けて,pingコマンドを実行しても応答がない。ただし,サーバーの管理者に問い合わせてみるとサーバー自体は正常に動いているという。こうなると,サーバーに行き着く途中で,何か問題が起こっている可能性が高い。こんな場面で役に立つのがtracertコマンドである。
トラブルとまではいかなくても,日々の運用で「何となく応答が悪い」と感じたときにはtracertコマンドを使ってみるとよい。あて先までにある各ルーターとの間の往復時間がわかるので,回線の込み具合を確認できる。
また,ネットワークを構築したり変更したりしたときにもtracertコマンドを使ってみるとよい。実行結果として表示される経路情報から,ホスト自身や経路上のルーターのルーティング設定が正しいかどうかを確認できるからだ。
経由する順にルーターを表示
まずは実際にtracertコマンドを使ってみよう。いつものようにWindowsマシンのコマンド・プロンプトを起動すれば準備は完了。そこで「tracert」と打ち,半角スペースを入れて,その後にあて先となるホストのドメイン名を入力する。ここで入力するのは,ドメイン名のほかに,IPアドレスやWindowsマシンのコンピュータ名でもかまわない。最後にEnter(エンター)キーを押せばtracertコマンドは実行される。
例えば,「www.tripodworks.co.jp」というドメイン名のWebサイトまでの通信経路を調べる場合には,コマンド・プロンプトで以下のように打ち込む。
C:\>tracert www.tripodworks.co.jp
実行すると何行にもわたって結果が表示される(図1)。詳しく見ていこう。
左端には1から17までの番号が付いている。これがあて先のホストに到達するまで経由したルーターの数である。この数のことを「ホップ数」と呼ぶ。
ホップ数の右隣にはミリ秒(ms)単位の数値が三つ並んでいる。これがtracertコマンドを実行したパソコンから途中途中のルーターにパケットを送り,応答が戻ってくるまでに要した「往復時間」だ。
そして各行の最後には,経由したルーターのドメイン名とIPアドレスが表示される。ただし最後の行(図1では17番目の行)はルーターではなく,あて先のホストのドメイン名とIPアドレスになる。