NTT東西地域会社の専用線系サービスで,総額7億1900万円の料金誤請求が判明した。誤請求の最長期間は39年2カ月。原因は,NTT東西がユーザーの回線を開通させる際に登録情報を誤るという人為的ミスだった。料金算定と設備管理のシステムが連携していないことも,ミスが判明しにくい一因となっていた。

 企業向けサービスで長い歴史を持つ専用線系サービスに,前代未聞の長期間にわたる料金誤請求が発覚した。

 その総数は過大請求が東西合計で194社307回線,過小請求が同325社538回線。中には,1971年10月から39年2カ月間も誤請求し続けた例もある。つまり,NTTが専用線に「収容ビル間の距離別料金」を導入した当初から誤りが生じていたということだ。

 誤請求の金額は,過大請求が東西合計で約2億3000万円,過小請求が約4億8900万円だった。この数字も実は,2009年12月時点でサービスを利用中のユーザーに限った数字に過ぎない。両社は2010年3月までに,過去に解約された回線も調査し,誤請求があった場合は個別に連絡する計画だ。

全国すべてのエリアで発生していた

 誤請求は,NTT東西の担当者がユーザーの情報をシステムに登録する際に,誤った「料金算定ビル」を入力してしまう人為的ミスから生じた(図1)。

図1●専用線料金で発覚した誤請求の例<br>専用線の料金はユーザーが収容されているエリア個別に定められた「料金算定ビル」の間の距離で料金が決まるが,誤った料金算定ビルを使って料金を算定していた例が全国で見付かった。
図1●専用線料金で発覚した誤請求の例
専用線の料金はユーザーが収容されているエリア個別に定められた「料金算定ビル」の間の距離で料金が決まるが,誤った料金算定ビルを使って料金を算定していた例が全国で見付かった。
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 ユーザーがA地点からB地点までを結ぶ専用線を申し込むと,NTT東西はそれぞれの地点がどの収容エリアに属するかを判別し,エリアごとに定められた料金算定ビルを特定する。このビル間の距離が「15km以上30km未満」といった距離区分のどこに当てはまるかで料金が決まる。誤請求が判明した回線はすべて,実際に回線を収容しているのとは異なるエリアのビルを料金算定ビルとして登録していた。

 対象は,アナログ専用線,高速ディジタル専用線,ディジタルアクセス,ATMメガリンクといった距離別料金制の専用線全体に及ぶ。また発生した地域も,「各収容エリアにおいて少なくとも1,2件ずつというように,全エリアにわたっていた」(NTT東日本の森安栄次郎・ビジネス&オフィス事業推進本部ネットワークソリューション部サービス基盤開発担当課長)。

請求書だけでは利用者は分からない

 長期間,誤請求が発覚しなかった理由の一つには,ユーザー側では誤請求を認識しにくかったことがある。「実際の回線設備がどこに収容されたかという情報は,毎月の請求書では確認できない」(森安担当部長)からだ。誤りを判別するには,サービス利用開始時点でユーザーに発行される「開通通知書」に記載された回線距離と,請求書の料金を付き合わせなくてはならない。

 しかし根本的な理由は,NTT東西が専用線の料金算定ワークフローに,まったく疑いを持ってこなかったことにある。「正しい料金算定ビルを選ぶことはサービスの根幹。そこが間違っているなどということは想定していなかった。ビルの選択を間違っていれば回線の開通自体ができないと思っていた」(森安担当課長)。

 だが,それはNTT東西の思い違いだった。料金算定ビルの選択ミスが起こる可能性はゼロではなく,さらに,その誤りを無視したまま回線を開通させることもできていた。