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 今回の演習テーマは「スパニング・ツリー・プロトコル」(以下,STP)だ。最初に,「スパニング・ツリー」という言葉を理解しておこう。スパニング・ツリーとは「ループ構成のない木構造」のこと。基点(以下,ルート)となるノードから木のように枝分かれした線の先に,他のノードがつながっているイメージだ。

 ネットワークがループ構成になっていると,何が問題になるのだろうか。イーサネットのネットワークでループ構成になっている個所があると,ブロードキャスト通信のフレームがいつまでも回り続ける「ブロードキャスト・ストーム」が起こる(図1)。すると,LAN内にフレームがあふれて,ネットワークがダウンしてしまうのだ。

図1●「スパニング・ツリー」とは何か<br>STPを利用すると,物理的にループ構成になっているネットワークを,「論理的にループのない木構造(スパニング・ツリー)」のネットワークとして扱える。
図1●「スパニング・ツリー」とは何か
STPを利用すると,物理的にループ構成になっているネットワークを,「論理的にループのない木構造(スパニング・ツリー)」のネットワークとして扱える。
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 STPでは,ブロッキング・ポートを設定することによって論理的にループのないネットワークを作る。ブロッキング・ポートとは,物理的にループ構成のあるネットワークで「通常はフレームを送信しないポート」のことだ。

 どのようにツリー構成を組むかは,スイッチ同士がBPDUと呼ばれる制御フレームをやりとりすることで決まる。スイッチはBPDUで「ブリッジID」,「パス・コスト」などの情報をやりとりする(図2)。

図2●STPのツリー構造はブリッジIDとパス・コストで決まる<br>STPを有効にすると,スイッチはBPDUフレームを送信し,スイッチ同士で情報を交換する。BPDUには,ツリー構造の起点となるスイッチ(ルート・ブリッジ)を決めるためのブリッジIDや,ルート・ブリッジまでの“距離”を決めるパス・コストなどの情報が含まれる。ブリッジIDが最も小さいスイッチが,ルート・ブリッジになる。
図2●STPのツリー構造はブリッジIDとパス・コストで決まる
STPを有効にすると,スイッチはBPDUフレームを送信し,スイッチ同士で情報を交換する。BPDUには,ツリー構造の起点となるスイッチ(ルート・ブリッジ)を決めるためのブリッジIDや,ルート・ブリッジまでの“距離”を決めるパス・コストなどの情報が含まれる。ブリッジIDが最も小さいスイッチが,ルート・ブリッジになる。
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 ブリッジIDは,ツリーの基点に位置するスイッチ「ルート・ブリッジ」を決めるために使う。最もブリッジIDが小さいスイッチがルート・ブリッジになる。

 ブリッジIDの長さは64ビットである。先頭から16ビットは管理者が設定する「ブリッジ・プライオリティ」,残り48ビットがそのスイッチのMACアドレスだ。

 管理者が各スイッチに対して異なるブリッジ・プライオリティを設定した場合,MACアドレスの値にかかわらず,ブリッジ・プライオリティが最も小さい値のスイッチがルート・ブリッジになる。

 問題の図を見てみよう。最も小さいブリッジ・プライオリティは「200」で,スイッチBとスイッチCに設定されている。この場合は,二つのスイッチのうち,MACアドレスが小さいスイッチCがルート・ブリッジに選ばれる。よって,問題の解答は選択肢cとなる。

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スイッチング編 第2回 STPとは