地方自治体において、“オンデマンド型”交通システムの導入が広がっている。オンデマンド型とは、赤字のバス路線の代わりに、ワゴン車や乗用車を使って利用者の玄関先から指定場所までドア・ツー・ドアで送り届けるサービスだ。その実現には、CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)やGPS(全地球測位システム)など、車を効率的に運行・管理する仕組みが不可欠だ。

写真1●福岡県八女市で走り出したオンデマンド型交通システム
写真1●福岡県八女市で走り出したオンデマンド型交通システム

 福岡県八女市が、オンデマンド型交通システムを導入した自治体の一つ。2010年1月18日に、「八女市予約型乗合タクシー」の運用を開始した。赤字だった路線バスに代えて、ワゴン車3台を市民の要望に応じて走らせ、送迎する(写真1)。

 利用者は、利用したい日時の30分前までに予約センターに電話し、目的地を伝えて予約する。自宅からはもちろん、外出先からでも利用できる。料金はサービスエリア内であれば、どこまで行っても片道300円。タクシーなら数千円はかかる距離も、路線バスと同水準の料金で移動できるわけだ。

利用履歴を元に「前回降りた場所」にも送迎

写真2●専用システムで予約を受け付けるオペレーター
写真2●専用システムで予約を受け付けるオペレーター
図1●電話番号から利用者のデータを検索し自動表示する
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 交通システムをオンデマンド型で運用するためには、利用者のニーズに合わせて車両を効率的に動かす仕組みが必要だ。エリア限定とはいえ、車両の台数は限られる。八女市の場合は、日本ラッドが開発したパッケージソフト「オンデマンド交通システム」(販売はNTT東日本/西日本)を導入している(写真2)。

 「オンデマンド交通システム」は、予約センターでの受け付けや、自動車への送迎指示といった業務を支援するための仕組みである。コンピュータと電話をつなぐCTI機能を搭載し、予約の電話を受け付けると、利用者の電話番号を元にデータベースを検索し事前登録済みの個人情報を表示する(図1)。

 利用者は、自宅の住所や、例えば足が不自由であることなどを電話口で毎回伝えなくても済む。過去の利用履歴も残してあるため、「前回降ろしてもらったところまで」といった希望でも、送迎先が分かるようにもしている。

 センターのオペレーターは、住民から、利用したい時間を聞き、座席が空いているかどうか予約状況を確認。空いていれば予約し、満席であれば利用時間をずらすなどの調整をする。