2010年度の概算要求の予算から無駄を省く“事業仕分け”の結果が2009年12月末にまとまる。年間約5億円のオープンソース関連事業は俎上に上らなかったが,どんな活動でどんな成果を上げているのか,調べてみた。

 「オープンソース・ソフトを企業や官公庁・自治体が活用するための実証データやガイドラインは整ってきた。これからは普及に向けて進みたい」。経済産業省でオープンソース関連事業を担当する商務情報政策局情報処理振興課課長補佐の梅原 徹也氏は現段階をこう述べる。

 2002年末から経産省がオープンソース・ソフト(OSS)の普及に支援を開始して7年が経過する。当時,同局IT産業室長は「国内ソフト産業の国際競争力向上」や「政府の情報システムへの投資効果を高くすること」を支援の目的に掲げた。その裏には,国内の情報システムやデジタル家電のOSが Windows一辺倒になってしまうことへの懸念があった。

 この7年で目的は微調整され,「OSSやオープンな標準の利用拡大によるコストダウンと産業競争力強化」となっている。家電メーカーよりも,情報システム産業界を通じた企業システムへの効果が主な狙いだ。

 OSSの普及活動は「オープンソフトウェア・センター」(OSC)という組織が進めている。OSCは独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)の中に設置。毎年ほぼ一律で約5億円というOSS関連事業の予算はOSCの活動に充てられている。

 OSCの活動は多岐にわたる。分類すると「標準化・調査」「海外協力」「人材育成」「利用促進」「普及・啓蒙」の5分野となる(表1)。

表1 政府のオープンソース関連事業とおおよその予算規模
表1●政府のオープンソース関連事業とおおよその予算規模
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 主なものを予算規模とともに見ていこう。

Rubyを国際標準に

 標準化では,オブジェクト指向スクリプト言語「Ruby」を国際標準規格にする活動を進めている。目的は,Rubyを企業や官公庁などで利用しやすくすること。「Rubyには正式な言語仕様がないため,政府調達などでは採用しにくい」(OSCセンター長の田代 秀一氏)という問題がある。

 今,国際標準化機構(ISO)での標準化を目指し,言語仕様の策定から進めている。ISOでも計画への合意が得られ,2010年4月に検討会が開かれる予定だ。複数年の事業であり,予算規模は年間当たりにならすと約4000万円となる。

 調査では,OSSを使った「クラウド・コンピューティング」が企業システムで利用できるのかを調べ始めた。クラウドに関する4つの検証作業を公募し,そのうち仮想化ソフトの「KVM」についての調査をVA Linux Systems Japanが,クラウド構築ソフトのEucalyptus(ユーカリプタス)の調査をクリエーションラインが2009年11月に請け負った。調査全体の年間予算規模は約6000万円だ。これらは2010年5月にまとめられ,政府のIT調達のガイドラインなどに反映されるとみられる。