約2300社が利用するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)がある。イデアクロスが2004年から提供している「All in 1 Office(オール・イン・ワン・オフィス)」だ。同社の中嶋公栄社長は、「ビジネスの成功には、みんなが儲かる仕組みが何より重要であり、その実現にはSaaSが有効だ」と主張する。(聞き手は島田 昇=日経コンピュータ)

「All in 1 Office」とは、どのようなサービスなのか。

 ビジネスに必要なアプリケーションをSaaS型で提供するサービスだ。グループウエアや予約受付管理、ホームページ制作、ブログコミュニティ、電子カタログなどを構築できる。特に、EC(電子商取引)のための機能やサービスを充実させている。マーケティング支援や決済代行のほか、既存の物流システムなどとの連携も可能だ。

 SaaS型のため、利用企業はシステムの運用負荷から開放され、コストも大幅に下げられる。当社サービスを利用すれば、オンプレミス型のECシステムは価格が高すぎると感じるだろうし、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)型のECシステムでは、あまりに物足りないと感じるだろう。

 All in 1 Officeは現在、約2300社が利用している。ここ最近は、大手通信販売会社など大企業の導入案件が急激に増えている。2004年からサービスを提供してきた経験とノウハウがあるため、大規模で複雑な業務処理にも耐えられるだけの品質を提供できるからだ。

利用企業の投資額は競合の半分から3分の1程度

 導入時にはきっちりとコンサルティングから入るし、投資額もオンプレミス型システムの半分から3分の1程度にまで抑えられる。そのため、競合他社とコンペになっても、9割以上の勝率を保っている。

なぜSaaS型にこだわるのか。

 利用者の視点に立てば、ASP型よりも高機能で、オンプレミス型よりも安価で柔軟性が高いサービスが求められるのは当然だろう。不況で企業が費用削減に動いたことも奏功したが、SaaS型やクラウド型への移行は自然な流れである。

 私自身は、2003年に当社を設立する前から、プライベートカンパニーでAll in 1 Officeの前身となるECシステムをASP型で提供していた。しかし、ASP型では利用企業の幅広い要望に応えることは困難だった。そこで、コアとなるプラットフォームを作り、そこに乗せた種々のアプリケーションソフトを一つの管理者画面からいじれるスタイルを模索したのが、SaaS化のきっかけだった。

 All in 1 Office当時はASP型のECシステムがほとんどで、SaaSという言葉自体がなかった。ASPに対して、SaaSはプラットフォームビジネスだ。すなわち、クラウドコンピューティングをベースにしたプラットフォームから自由にアプリケーションを選択して利用できる仕組みでなければならない。今でも、こうしたコンセプトに沿ったSaaSは少ないのではないか。