東京都内では、ソフトウエア開発者コミュニティによる『勉強会』と呼ばれるイベントが盛んに開催されている。その中でも、ひときわ異彩を放つ「Andronjoナイト!」が、2010年2月15日に開催された。女性による、女性のためのAndroidイベントである。この日集まった80名近い参加者の1/3は女性であった。

 イベントの正式名称は「日本Androidの会2010年2月のイベント」。Androidの普及促進団体「日本Androidの会」の定例の勉強会という体裁ながら、企画と出演はすべて日本Androidの会「女子部」が担当した。

 「女子部」は、2009年12月1日に日本Androidの会のメーリングリストに投稿された一通のメールから始まった。メールの投稿者は、現在「女子部」副部長のあんざいゆき氏(図書館検索および予約用AndroidアプリLibraroid開発者)。この投稿に対し、日本Androidの会の女性メンバーから数十通のリプライが集まった。こうして「女性どうしでAndroidの話で盛り上がりたい!」という熱い思いを共有する「女子部」が発足した。現在、「女子部」には72名のメンバーがいる。

初期画面が無愛想だと『壊れている』と思われる!

 最初のセッションは、矢野りん氏(デザイナ、「女子部」部長)と前出のあんざいゆき氏による「ラブリーなアプリとは何か」。AndroidのSDK(ソフトウエア開発キット)に含まれているnotepadというプログラムを題材に、デザイン、操作性を改善していく企画である(写真1)。

写真1●サンプル・アプリ「notepad」を題材にデザイン、操作性を改善。説明はあんざいゆき氏
写真1●サンプル・アプリ「notepad」を題材にデザイン、操作性を改善。説明はあんざいゆき氏
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 最初のスライドには、改善の指針がまとめられていた。例えば「空のリストは避ける」。アプリを立ち上げた最初の画面に何も表示されていないと「女子は『壊れている』と思います!」と矢野氏は指摘する。「せめて『メニューボタンを押す』といったテキストを入れること。できれば、初期画面で基本機能のメニューが表示されていることが望ましい」と実践的な指南をしていった。

 取り上げた例題では「手書き風で、ちょっとグランジな」(矢野りん氏)デザインを施していった。オリジナルの画像を使ったメニュー・ボタンを使うこと、ボタン押し下げ時に画像を変化させること、アイコン類だけでなく罫線も手書き風のテイストの画像に置き換えること(「詰めが甘いと女子にモテません」)、といったアレンジを施し、オリジナルに比べるとぐっと親しみやすいアプリに変身させた(写真2)。

写真2●デザイン・テイスト(今回は「グランジ風」)に合わせ、罫線など細部も作り込む
写真2●デザイン・テイスト(今回は「グランジ風」)に合わせ、罫線など細部も作り込む
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 これらのデザイン適用に伴うプログラマの仕事はXMLにより記述する設定の変更である。それぞれの所要時間は「数分間で終わる」と、大きな負担ではないことも同時に説明した。プログラマとデザイナがどのように一緒に仕事をするのかを示す例題でもあったといえる。

 Androidスマートフォン向けアプリは、開発者個人がリリースするような小規模なものが多い。そうした小規模プロジェクトでも、ユーザーの目線や、デザイナの協力を取り入れることで、見違えるように「おしゃれ」になる。いわば「女子」という架空のユーザーを想定してユーザー・インタフェース改善の指針を示すセッションだった。