経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、アプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。HPが主張する基盤像を紹介する。

企業情報システムの現状とこれから

 企業情報システムの目的は、言うまでもなくITによるビジネスへの貢献である。しかし、これまでの日本の企業情報システムは、個々の「システム構築プロジェクトを成功させること」を第一に構築されてきた。そのため、IT基盤はプロジェクトごとにサイロ化され、プロジェクトが実施された時点における個別最適かつ固定された状態になってしまっている。

 このことは、ビジネス環境が大きく変化する状況にあって、ビジネスが求めるコスト削減や新サービスの迅速な提供などに対応できないことを意味する。ITがビジネスに貢献するどころか、ビジネスの足かせになっていると言える。

 現在のような状況に陥った原因は何であろうか?そして、問題解決のためには何が必要だろうか?本稿では、これらの問題を考えるためのキーワードとして、(1)標準化・共有化、(2)中長期的なIT戦略、(3)IT組織の成熟度、を取り上げる。

(1)標準化・共有化
 IT基盤に限らず、企業(エンタープライズ)における技術要素は、標準化され、共有化されているほうが効率的である(例えば、入退館を管理するITカードシステム)。IT基盤は本来、中長期的かつ全体最適の視点から構想され、構築・維持されるべきものだ。そこでの標準化や共有化は、目指すべき重要なテーマである。

 しかし残念ながら、現在の企業情報システムは、中長期的なIT戦略が十分に検討されず、目先のプロジェクト遂行に多くのエネルギーを費やしている。構築されているIT基盤の多くで、標準化・共有化が十分に考慮されていない。企業のIT利用をビジネス活動としてとらえるなら、現在のIT部門の多くは、ビジネスへの貢献という明確なビジネスモデルを持たず、プロジェクトと障害対応に明け暮れる“自転車操業”状態に陥っているといっても過言ではない。

 かつては、ネットワークも縦割りで構築されていた時代があった。だが、技術の進歩は、標準化・共有化によるメリットをより大きなものにしている。技術進歩に伴ってストレージに関しても標準化・共有化が進んでいる。しかし、サーバーやOS、ミドルウエアなどの利用においては、標準化・共有化がなかなか進んでいない。

 だが、IT基盤の標準化・共有化が進まないのは、技術的な問題からではない。むしろ、企業情報システムを担う日本の組織が持つ、個別プロジェクトを重視したIT構築プロセスにあると考えられる。プロジェクトごとの納期とコストをコントロールすることは、もちろん必要である。だが、個々のプロジェクトで勝手にIT基盤を選択し、固定してしまうと、全体としては非効率的なものができてしまう。プロジェクト単位の縦割りで構築された個別IT基盤では、標準化・共有化の実現は困難だ。

 一番の問題点は、予算の付け方である。アプリケーションとIT基盤を区別せず、「○○システム全体(アプリケーション開発費+基盤のハード/ソフト)で“いくら”」という見積もり方式では、個別のIT基盤が林立しても仕方がない。