経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、アプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。デルが主張する基盤像を紹介する。

クラウドをきっかけに「次世代IT基盤」が際立つ

 数年前、「クラウドコンピューティング」という言葉が、ここまでIT業界を一色に染めるキーワードになろうとは誰も予想していなかったことだろう。今やメーカーやシステムインテグレータが提供する、すべてのIT関連リソースは、クラウドの名の下に体系化される方向に向かっているようにも見えるほどだ。利用する側も、IT部門はもとより、経営層もエンドユーザー層も、クラウドを“共通キーワード”として強く意識し始めている。

 本稿では、次世代IT基盤のあるべき姿をコンセプトとして整理してみる。その際に、ITを提供する側、利用する側の双方がクラウドコンピューティングへの意識を強めていることは、内容を明確にするうえで非常に良い機会になると感じる。なぜなら、クラウドコンピューティングの実装あるいは利用を考えることそのものが、“次世代IT基盤のあるべき姿とは何か”の解につながるからである。

 論点の具体的なポイントは、次の3点に絞られよう。

●企業はITに対して何を「真の資産」として考えるべきか
●「真の資産」を最も効率的に運用するためのITのコンセプトは何か
●今後、IT部門が採るべきアプローチ方法はどのようなものか

 これら3点を論ずることによって、企業のためのITプラットフォーム、すなわち次世代のIT基盤がどうあるべきかが見えてくると確信している。

論点1:企業はITに対して何を「真の資産」として考えるべきか

 企業のIT化の歴史は、基幹業務をメインフレームで処理・運用し、必要な部署が使用することから始まった。その後、オープンシステムといわれるUNIXやWindowsが「サーバー」として、そしてPCが「クライアント」として企業に入り込み、それらをネットワークで接続し多くの社員が使用するようになった。クライアントサーバー・システムの本格的な普及である。

 当初、クライアントサーバー・システムの多くは、メインフレームを置き換えるものではなく、共存するサブシステムとして利用された。その後、企業は「一人1台」の環境構築を目指し、基幹業務だけでなく、周辺の様々な業務のIT化にもクライアントサーバー・システムをもって取り組んだ。現場でのファイル共有や情報系として統合されたシステムが順次構築されていった。

 その後、インターネットが登場したことで、クライアントサーバー・システムがWeb技術と融合する。社内外のアプリケーションが連携したり、モバイルからアクセスしたりすることも日常的になった。日々の仕事がITをベースに進むようになり、結果的に設置されたサーバー・ハードウエアも増えた。

 少々乱暴ではあるが、2000年代半ばまでの企業のIT化の歴史を概観してみると、特に中堅規模以上の企業では、上記のように総括できるのではないだろうか。