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電子行政

電子行政:オピニオン/インタビュー

日経BPガバメントテクノロジー

公的個人認証JPKIの普及の条件とは

2010/02/18

文:仙波 大輔(NPO法人 東アジア国際ビジネス支援センター[EABuS] 専務理事)

 我が国の行政手続き電子化のための重要なセキュリティ基盤として公的個人認証サービス(JPKI)の運用が開始されて6年が経過し、その証明書発行件数は累計で100万件を超えた(図1)。

図1●JPKI証明書の累積発行件数の推移
図1●JPKI証明書の累積発行件数の推移

 一方、JPKIを必要とする電子化された行政手続きの利用は、一部を除いて必ずしも進んでいない。2009年1月時点で政府の行政ポータルサイト「e-Gov」から利用できる国の行政手続きは1万2287ある。これらの電子化行政手続きの全部がJPKIによる電子署名を必要としているわけではなく、電子化された手続き数が4342と最も多い厚生労働省を例にとると、JPKIを必要としている手続きは約16.5%(716手続き)に過ぎない。もちろん、いわゆる軽微な手続きを含めてすべての手続きにJPKIが必要とは考えないし、個別の行政機関で独自の認証制度を採用している手続きもあると考えられる。だが、JPKIが行政手続きの共通基盤として十分活用されているという状況にはない。

 以下では、こうしたJPKIの現状を踏まえて、今後の電子化社会における個人認証基盤の望ましいあり方と普及のための条件について考えてみる。

キラー・アプリケーションの整備・拡充

 いうまでもなく、JPKIは行政手続き電子化の基盤であり、これを利用するアプリケーションがあってはじめて機能する性質のものである。したがって、JPKIの普及は電子化された行政手続きの普及状況に強く依存する。

 図1の証明書発行件数の推移を見ると、2007年末から2008年初めにかけての4カ月間で2倍強に増加していることがわかる。この急激な増加の要因は、利用者にとって非常にインセンティブの大きい行政手続きの電子化が実現した、あるいは改善されたためと推測でき、その代表的なアプリケーションとして「e-Tax」による所得税の電子申告が挙げられる。図1の累積発行件数を月次発行件数に換算してみると、所得税の確定申告の準備時期(11月から翌年2月)に証明書発行件数のピークが表れていることでもこの推定が裏付けられる(図2)。

図2●JPKI証明書の月次発行件数の推移
図2●JPKI証明書の月次発行件数の推移

 e-TAXは2004年からサービスを開始したが、その後利用率は低迷し、打開策として2007年に所得税法改正をともなう次のような抜本的改善が実施された。

操作性、利便性の向上
・添付書類の削減(申告者による2年間保存)
・確定申告書作成コーナーからのシームレスリンク
・JPKI利用のためのPC事前設定の簡素化(46クリックから12クリックへ)
運用の簡素化
・e-Tax利用者登録のオンライン化と利用者IDの即時発行
・確定申告期間における24時間受け付け
・税理士による代理申告における納税者電子署名の省略
電子申告優遇措置
・電子申告の税額控除(一律5000円)
・還付申告の場合の還付期間短縮(6週間から3週間へ)

 これらの改善のほか、税務署現場での勧誘活動や、マスコミ、Webサイトによる広報活動などの努力により、2008年度の所得税申告におけるe-Tax利用率は30%を超えたと発表されている。JKPIの証明書発行件数がこのe-Taxの抜本改善と時期を同じくして大幅に増加している事実は、JPKIの普及がそのアプリケーションに強く依存していることを示している。

 このようなJPKIのキラー・アプリケーションは今のところ非常に限られている。行政手続きの電子化に関して「オンライン利用促進行動計画」で示された利用率50%を目標とする165手続きの2008年度利用率実績は、平均で34%と発表されている。しかし、この平均値をけん引している利用率の高い一部の手続きには貿易関係、保険業関係などの法人が行う手続きが多く、個人のJPKI利用とは直接つながらない。

 むしろ、165手続きの中で利用率が1%未満の手続きが50%弱(77手続)あり、うち24手続きは利用率が0%となっている点が問題である。このような低利用率の手続きには個人が行う社会保障関係の手続きが多く含まれており、JPKI利用のすそ野を広げるためには、これらの行政手続きの電子化をe-Taxの例に見られるようにあらゆる側面から全面的に見直し、改善を図るべきである。

>>JPKI活用分野の民間への拡大
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