IP電話は逆探知されないの?

(イラスト・アニメーション:岸本 ムサシ)

  今回の回答者:
松田 康
アジルネットワークス
取締役 プロダクト&サービス部長

 逆探知とは,電話の着信者側から発信者の所在地を特定することです。一般にIP電話と言う場合は,IPを利用したアクセス回線と一体の電話サービス──NTTのひかり電話やYahoo! BBのBBフォンなどを指します。回線と一緒に提供されているので,発信者の所在地の特定は比較的容易です。

 けれども,発信者がインターネット電話の場合はそうはいきません。インターネット電話とはインターネットを経由する電話サービスで,弊社のアジルフォンやSkypeなどがあります。アクセス回線と電話サービスを別々の会社が提供しているため,逆探知が難しくなります。インターネットを経由することもその原因の一つです。

 「音声データに付与された送信元IPアドレスで,発信者の所在地はわかるのでは?」と思う人がいるかもしれません。確かに,発信元のIPアドレスから所在地を特定する技術やサービスはありますが,100パーセントではありません。都道府県の範囲までならほぼ確実に特定できますが,市町村単位まで特定しようとすると,精度はおよそ30パーセントまで下がるようです。発信者の所在地の特定については,各インターネット電話サービス会社がさまざまな試みをしているところです。

 しかし,発信者を特定するだけなら,そう難しくありません。インターネット電話の発信者は,その電話サービス会社に利用登録をしているからです。着信側の電話事業者の通話記録からその時刻に電話をかけてきたインターネット電話を割り出し,その電話サービス会社に問い合わせることで,発信者を割り出すのです。複数の会社を経由する面倒はありますが,所在地の特定よりは難易度が低いのです。

 つまり,インターネット電話では発信者の所在地の特定は難しいですが,発信者を特定することは不可能ではないと言えます。