MIPSアーキテクチャのAndroidを使用

 KDDI研究所のSTBでは、MIPSアーキテクチャのCPUを採用している。動作周波数は600MHz。搭載するメモリーは512Mバイト。Androidのバージョンは1.5である。

 Android搭載スマートフォンはARMアーキテクチャのCPUを搭載する場合が多い。このSTBでMIPSアーキテクチャを採用した理由について、KDDI研究所 開発センターの伊藤篤アプリケーションプラットフォームグループ主幹エンジニア(写真3)は「STBの分野では一番実績があるため」と説明する。「今回は、Androidの世界で機能検証ができたことが大きい。一度できれば、他のアーキテクチャのCPU上でもできるはずだ」(同)。

写真3●KDDI研究所 開発センター 主幹エンジニア伊藤篤氏

 開発にあたっては、米MIPS Technologies社が配布しているMIPSアーキテクチャ対応のAndroidを利用した。

AndroidにHD動画を扱う機能を新たに追加

 このSTBで、KDDI研究所は次の機能を独自に開発した。

(1)カーネル層でTransferJetと動画デコーダのためのデバイス・ドライバを追加。
(2)ライブラリ層でデコーダ・インタフェースを追加。
(3)アプリケーション・フレームワーク層でSTB Frameworkを追加。
(4)Androidアプリケーション層でTransferJetアプリ、STB Frameworkメニュー、VOD(Video on Demand)アプリ、IPマルチキャストアプリを追加。

写真4●セットトップ・ボックス上でのHD動画再生
写真4●セットトップ・ボックス上でのHD動画再生
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 HD動画を扱う機能は、Androidの標準機能には含まれない。そこで、ハードウエア・デコーダーを扱うデバイス・ドライバ、AndroidアプリケーションからHD動画を扱うためのライブラリを新たに作成して使っている。「Java言語で開発しDalvik仮想マシン上で動くAndroidでは処理が遅いのではないか」と懸念する声も当初あったが、実際に開発してみると大きな問題はなかったという(写真4)。