Skiff社PresidentのGilbert Fuchsberg氏
Skiff社PresidentのGilbert Fuchsberg氏

 米メディア大手Hearst Corp.の子会社であるSkiff社が,11.5型の大型画面を備えた電子書籍端末を2010年内に投入する。その名は「Skiff Reader」。現在,販売されている電子書籍端末の中では最大の画面を備えつつ,厚さは1/4インチ(6.35mm)と最も薄く携帯性に優れることを強調する。同社PresidentのGilbert Fuchsberg氏に,電子書籍ビジネスの戦略や端末などについて聞いた。

Skiff社の電子書籍事業について教えてほしい。

Fuchsberg氏 我々は,電子書籍端末の開発から,サービス・プラットフォーム,デジタル店舗の構築まで,すべてを手がけている。ゴールは,新聞,雑誌,書籍,ブログなど広範囲に渡る電子書籍を集めて,それを最適化して消費者に届けることだ。この事業で競争力を保つためには,端末メーカーや無線通信事業者などとも連携しつつ,出版社や広告主,消費者の期待に応えなければならない。電子書籍端末のSkiff Readerは,2010年内に発売する予定だ。

Skiff社は,端末の開発に当たってどのような企業と協業しているのか。

Fuchsberg氏 まだ一部のパートナーしか公表していない。今後,数カ月の間にサービス,技術,製造に関するパートナーを公表していく。

 ここでは一例を挙げよう。まずは米Sprint社。同社はSkiff Readerに搭載する3G無線通信サービスを提供するだけでなく,直営店のSprint Storeで同端末を販売する予定だ。同社は,こうした契約を結んだ初の米国の通信事業者である。なお,Skiff Readerは,他の家電量販店やWeb直販店でも販売される予定だ。

 米Marvell社とも緊密に連携している。高解像度の電子ペーパーを低消費電力で,しかも低コストに駆動する当社のIP(知的財産権)を導入したプロセサを,Marvell社と共同開発して実装している。

 韓国LG Display Co., Ltd.も重要なパートナーのひとつだ。我々は,彼らが開発したガラス基板を使わない独自の電子ペーパーを初めて採用する。これはガラス基板の代わりに,ステンレス基板を使っている。このため,ディスプレイは薄くてフレキシブルだ。さらに画素数も1600×1200と多いため,写真など画像の表示にも適している。画面サイズは現存する電子書籍端末で最大の11.5型で,端末の厚さは1/4インチ(6.35mm)。有機TFTを採用した米Plastic Logic社の「QUE」(厚さ8.5mm)より薄い。なお,Skiff Readerの重さは495gである。

Skiff Readerがここまで大型の画面を採用する理由は何か。

Fuchsberg氏 新聞社や出版社はこれまで,紙の誌面レイアウトなどを通じたアイデンティティーの確立に多くの投資をしてきた。それが,画面が小さい電子書籍端末では一気に無価値になってしまう。我々の端末は大型画面を搭載しているので,画面に合わせた多少の修正はあるものの,新聞紙面のレイアウトをほぼ保てる。

Skiff社のビジネス・モデルを説明してほしい。

Fuchsberg氏 電子書籍コンテンツの販売(定期購読,個別課金)や広告,フォーマット変換などから収益を得る。価格はまだ公表していない。

電子書籍サービスを受ける端末として,専用端末のほかに,タブレット型端末なども注目されている。カラーや動画表示が可能なタブレットのような端末は,将来的に電子書籍端末を置き換えていくのか。

Fuchsberg氏 カメラを例に取ると,デジタル・カメラという専用端末と,カメラ搭載携帯電話機が併用されるように,たった1つの端末ですべての人を満足させることはできない。電子書籍市場には今後,さまざまな端末が登場し,利用シーンによって使い分けられるようになる。

 Skiff Readerのような専用端末は,「読む」という行為に最適化されている。米国には,日常的に新聞や雑誌を読み,毎年6冊以上の本を読む人口が6500万人以上いる,と言われている。電子書籍端末のターゲットはこうした人たちで,それは世界各国に数多くいる。電子書籍端末の市場はまだ立ち上がったばかりであり,大きな市場性がある。