NECビッグローブ(ビッグローブ)は、Android OSを搭載したクラウド端末を2010年秋に発売し、この端末向けの通信サービスとアプリケーション/コンテンツ・サービスの提供を開始する。ISP(インターネット・サービス・プロバイダー)が自らハードウエアと通信サービス、アプリケーションをワンストップで提供する垂直統合型のビジネスモデルで、2012年にクラウド端末事業全体で売り上げ100億円のビジネスに育てるのが目標である。電子メールや写真共有など、パソコン向けに提供しているサービスとの連携や、箱から取り出せば設定不要で使えるなど、垂直統合型の利点を生かしたサービス展開を予定する。

 新ビジネスでは、「端末の販売による収益にはそれほど期待していない」(ビッグローブ パーソナル事業部 の山本善清マネージャー)という。むしろ端末とセットで提供する通信サービスと、アプリやコンテンツ提供用のプラットフォーム・サービスによる収益を大きなビジネスの柱として育てるのが目的である。

3GとWiMAXを一体化した通信サービスを検討

 この新サービスでユニークなのは、ビッグローブが提供する通信サービスにある。クラウド端末は無線LANと第3世代移動体通信(3G)、WiMAXの3種類の通信回線に対応する予定である。このうち主に外出先で利用することになる3GとWiMAXについては、ビッグローブがMVNO(仮想移動体通信事業者)となり、利用環境に合わせて3GとWiMAXの使いやすい方を利用できるサービスを検討している。ユーザーにとっては、利用可能エリアの広い3Gと、通信速度の速いWiMAXの両方のいいとこ取りができるサービスとなる。さらにこのサービスでは、3GとWiMAXの2回線の利用料金を単純に合算請求するといったものではなく、利用した通信量や接続時間などを基準にしたシンプルな料金体系の導入を目指している。ユーザーは3GとWiMAXの各回線を別々に契約するよりも低価格で、かつ分かりやすい料金体系で利用できるようになる。

 具体的な料金プランとしては、月額基本料金内で3GとWiMAXの回線種類を問わず一定量の通信が可能で、それを超えると従量料金が加算され、その後利用料金が上限に達するとそれ以降は定額となる「二段階定額制」を予定しているという。ビッグローブの山本マネージャーは、「通信事業者との交渉はこれからで、どこまで当社が考える形でサービス提供できるか見えない要素もある。しかし、メインターゲットである一般ユーザーに新端末を日常的に使ってもらうには、こうした分かりやすい仕組みが必要だ」と語り、3GとWiMAXを一体提供する狙いを説明した。

 さらにクラウド端末事業では、ISP事業で「世帯」単位だった契約が「個人」単位の契約になる点も、ビッグローブにとって大きな魅力だという。これまで以上に会員数の伸びを期待できる上、「家族割り」や、固定通信サービスとの「セット割り」といった料金体系を導入することで、利用者の囲い込みとサービス解約防止の効果を期待できるためだ。

アプリ/コンテンツ・プラットフォームで収益

 ビッグローブがもう一つ大きな収益の柱として期待するのは、クラウド端末向けのアプリ/コンテンツ・プラットフォームとして運営する「andronavi」である。ビッグローブが提供するクラウド端末は、オープンなAndroid OSを搭載しているので、米Googleが運営する「Android Market」などで提供しているアプリも利用できる。ただし、こうしたサービスで提供しているアプリケーションは携帯電話機向けに作られたものがほとんどで、画面サイズの違いなどから必ずしもビッグローブのクラウド端末で利用しやすいとは限らない。そこでandronaviでは、クラウド端末で利用することを前提にアプリケーションを揃えることで、初心者ユーザーに対してハードと通信回線に加え、アプリ/コンテンツまでワンストップで提供する環境を整える。

 さらにandronaviは、ビッグローブ自身がアプリやコンテンツを販売する場としてだけでなく、ソフト・メーカーやコンテンツ事業者にもプラットフォームとして開放し、アプリやコンテンツの販売に伴う手数料を収入源とする。andronaviはビッグローブのクラウド端末利用者向けに限定せず、他社のAndroid端末ユーザーに対しても開放する。国際展開も視野に入れており、例えば日本のアニメやドラマといった映像コンテンツに字幕をつけて、海外向けのandronaviで提供することも検討している。