岡三証券グループの目黒博・執行役員
岡三証券グループの目黒博・執行役員
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 「株券電子化やJ-SOX(金融商品取引法)、東京証券取引所の新システム『アローヘッド』対応など厳しいスケジュールで制度対応案件が続いた。何とか乗り切りつつある」。独立系準大手証券業の岡三証券グループのCIO(最高情報責任者)に当たる目黒博・執行役員(子会社の岡三証券取締役 兼 岡三証券情報システム代表取締役社長)はこう話す。

 目黒氏は2008年6月に現職に就任した。遅延が許されない大型プロジェクトが複数並行するなか、プロジェクトマネジメントオフィス(PMO、関連記事)に当たる「プロジェクト管理室」の機能を強化した。プロジェクト管理室主催の「戦略会議」を週1回、目黒氏も加わる全体会議を月2回開くなどして、定例会議に細かな調整や決定事項を集約したのだ。「ただ詳細な説明を求めるのではなく臨機応変さが必要」と言う。報告者の話しぶりが自信に溢れていれば、それ以上の細かな説明は求めずに任せる。そうではない場合に限って、会議以外の場で詳細に事情を聞いて、すぐに人手を増やすなどの手を打つようにしている。

 情報システム部員には、現行システムの保守と、新規システムの開発をほぼ全員に兼務させている。「新規と保守を比べれば、新規のほうが上位に思われがち。担当者を分ければ、モラル・やる気に悪影響があるからだ」(目黒氏)

 こうした細やかな配慮は、目黒氏の経歴と関係がありそうだ。目黒氏は岡三証券に新卒入社し、情報システム部門に配属された。その後、人事部門に異動。人事部長を7年間務めた後に情報システム部門に戻った。人事部門と情報システム部門にいた期間がおよそ半々だという。人事管理と情報システムに精通した経歴が今の仕事に役立っている。

 2010年1月4日に稼働した東証の新システム、アローヘッド(関連記事)については、「東証が接続方式やテストのスケジュールを明快に示していたので、岡三証券グループ内のプロジェクトも波乱なく進められた。売買の処理速度が速くなったので、自己売買部門を強くするための情報システム強化を進めている」と言う。

Profile of CIO
◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・経営トップとは、オフィシャルな会議以外でも報告・連絡・相談を頻繁にするようにしています。特に、将来のリスク開示と対策については、思い切って申し述べるようにしています

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・近年、ITベンダーが主導するシステムコンセプトの質が落ちてきているのではないかと懸念しています。これまでのようなテクノロジーの進化に応じたシステム更新が難しくなっているように感じます
・ITニーズ自体が産業・業界全体への対応から、個別企業対応にシフトしていることを感じます。ITベンダー各社がコンサルティング力強化に乗り出しているようで、今後に期待したいと思います

◆最近読んだお薦めの本
・『名経営者が、なぜ失敗するのか?』(シドニー・フィンケルシュタイン著、橋口寛監訳、酒井泰介訳、日経BP社)
企業の発展・成功については、その時代の背景や、企業独自の事情が存在するので、ほかの時代・企業の発展・成功は必ずしも応用できないとのことです。一方で、企業の衰退・失敗には時代を超えた、企業を問わない法則があるようで、興味深く読みました

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・日経ビジネス
・日経コンピュータ
・日経情報ストラテジー

◆仕事に役立つお薦めのインターネットサイト
nikkei BPnet
田原総一朗氏、大前研一氏ら著名評論家諸氏の時流に沿った論評はとても興味深いです

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・CIO同士の横のつながりを重視しています。特に、出身大学の経営者懇談会に出るようにしています。理系の大学で、CIOの方々も数多く参加しているので、情報交換に役立ちます

◆ストレス解消法
・1杯のお酒と、方向不安定なゴルフ
・時々、コンサートに行って自分の世界に浸ることがあります