情報活用は、すべての企業にとって重要な課題である。だが、取り扱う情報の種類や場面、期待する効果によって、考慮すべきポイントは異なる。さらに、環境変化に迅速に対応するためには、複数情報領域の有機的な連携が必要である。“視界ゼロ”時代を乗り切るためにも、今こそ情報活用を推進する組織を本格的に立ち上げるべきである。

 これまでの情報活用の多くは、結果情報を迅速に収集し、判断材料として提供することを目的にしてきた。そうした発想のもとで、予期した状況の発生をいち早くとらえ、素早く反応することに重きが置かれていたわけだ。

 しかしながら、現場が使いこなせない、あるいは経営の要望に迅速に対応できないなどにより、十分な成果が出ないことが常に問題として挙げられる。加えて、環境変化のスピードは早まるばかりで、予期した状況の発生を待つのではなく、変化の発生を予知することの必要性が増している。

 仮に“視界ゼロ”が常態になるとすれば、目に見える過去の実績だけではなく、内外の様々な情報元から、チャンスやリスクの兆しを積極的に見つけ出し、ビジネス上の判断材料にすることが、これまで以上に重要になる。

 兆し情報の有力なソースに、ソーシャルネットワークがある。一時期の熱狂的なブームは去ったが、世界最大といわれているMySpaceの登録ユーザー数は2億人を超える。総務省の調査によれば、2009年1月末時点の日本におけるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)会員数は、約7000万人に達している。ソーシャルネットワークが一部の特別な人だけのものではなくなったという点に異論はないだろう。

 SNSが広く普及したことにより、口コミやゴシップのような情報が、驚くような速さで日本全土にとどまらず、世界に広がるようになった。

 広報やマーケティングの担当者は、このような情報チャネルを利用してどのような影響を市場に与えることができるのか、様々な取り組みを行っている。だが、企業発の情報がそのまま伝わることは少なく、自然発生的な情報のほうが広く・早く伝達されている。

 逆に、このようなコミュニティ内の情報を、チャンスやリスクの兆しとしてとらえようという試みも多数見受けられる。例えば、新製品の販売予測や金融機関における不正送金の検知などが、その代表的な例であろう。

 いつ、どこで、どのように発生するかが不明確な情報を、チャンスやリスクの兆しとしてとらえることは簡単ではない、だからこそ、競合他社に先駆けて、このような情報ソースを活用できるようになれば、競合上優位に立つことができるのではないだろうか。

 一方で、従来型の情報活用においても、十分な成果を得ることができていないケースが散見されている。同時に、兆し情報を見つけ出すこと自体容易なことではない。だからこそ、情報活用を推進する組織を本格的に立ち上げる必要がある。

 以下では、情報活用に関する重要項目について、専門アナリストが解説する。