「この1~2年,データ・センターを利用し,ハブ・アンド・スポーク型のグローバル・ネットワークを構築する企業が増えてきた」(KDDIの井出部長)。国内で目立つデータ・センターへのサーバー集約の動きが,グローバル・ネットワークにも広がりつつある。

 アウトソーシング事業者や国際通信サービスを提供する通信事業者は,急ピッチで世界各地にデータ・センターを展開中。これに合わせて企業ユーザーは,世界のどこからでも快適かつ安全に,しかもコストを最小限に抑えて利用できる“クラウド”型システムを目指している。

遅延抑制,帯域有効利用の効果も

 サーバー集約・統合の最大の目的はシステムの構築・運用コスト削減や管理の効率化である。データ・センターに集約することで,システムの安定運用も期待できる。

 海外に拠点を展開する場合,それぞれの拠点で各種サーバーを運用すると,管理にかかる手間は膨大になる。海外拠点では「日本からシステム担当者が行くのではなく,赴任した社員が他の業務と兼任でシステム管理に当たるケースが多い」(海外通信事業者)という。

 そうした状況では,適切な運用を維持することは難しい。データ・センターを利用し,複数拠点のシステムを統合することで,各拠点の運用負担が小さくなるほか,トラブル対処が容易になる。「コーポレート・ガバナンスも効かせやすい」(NTTコミュニケーションズの大井貴グローバルソリューション部長)。

 とはいえ,海外にあるデータ・センターを使う理由は,こうした管理の効率化だけではない。ほかに「遅延の低減」,「帯域の有効活用」といった効果も期待できる(図1)。

図1●遅延を小さくして運用の手間やコストを削減<br>海外拠点から近い場所にデータ・センターを配置することで,遅延を低減できるほか,帯域の有効利用や管理の効率化によるコスト削減といった効果を期待できる。
図1●遅延を小さくして運用の手間やコストを削減
海外拠点から近い場所にデータ・センターを配置することで,遅延を低減できるほか,帯域の有効利用や管理の効率化によるコスト削減といった効果を期待できる。
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 運用の効率化やガバナンスの観点だけなら,日本国内の本社やデータ・センターにすべてを集約し,海外の拠点から日本にアクセスする形態も選択肢の一つになる。実際,日本にシステムを集約している企業は少なくない。だがこれでは,遠く離れた拠点からのアクセスでは大きな遅延が生じ,使い勝手が著しく低下しやすい。世界各地から利用するとなると,24時間体制での運用が必要になるが,日本だけに集約する場合は,その運用もハードルが高くなる。

 そこで,ソニーや双日,日本精工などの先進企業は地域ごとにデータ・センターを利用している。周辺の拠点から最寄りのデータ・センターにアクセスできるため,遅延の影響が少なくなる。拠点と各地域のデータ・センターとの間でトラフィックの大半が収まれば,国際間通信で必要とする帯域も少なくなり,結果的に,国際回線のコスト抑制につながる。