図1●世界各地域における日系企業の現地法人数<br>近年では中国へ進出する企業の数が急激に伸びている。出所は経済産業省の海外事業活動基本調査。
図1●世界各地域における日系企業の現地法人数
近年では中国へ進出する企業の数が急激に伸びている。出所は経済産業省の海外事業活動基本調査。
[画像のクリックで拡大表示]

 「性能面で業務遂行の妨げにならない,安定した海外ネットワークが欲しい」,「できるだけコストを抑えながら,海外拠点を結びたい」──。海外に進出する企業の多くが,最適なネットワーク・インフラ作りに腐心している。

 景気停滞の影響を受けてはいるものの,日本企業の海外進出の動きは相変わらず続いている。いわゆるグローバル・ソーシングの一環である。中でも中国をはじめとするアジア各国への進出は活発(図1)。最近では「安い労働力を得るための“モノづくり”の拠点としてだけでなく,“モノ”を販売するための大きな市場としてアジアをとらえる企業が増えている」(野村総合研究所の原 正一郎社会産業コンサルティング部上級コンサルタント)。

埋まり始めた国内と国際のギャップ

 戦略的な役割を持つ海外拠点を展開するには,日本の本社と密接に連携するためのICTインフラが欠かせない。最近は,既に海外に拠点を展開し,ネットワーク化を終えている企業の中にも,インフラを見直す動きが目立ってきている。「世界各地の拠点にまで本社のガバナンスを効かせたいというニーズが高まっている」(AT&Tジャパンの岩澤利典社長)からだ。多くの企業が,ガバナンス,システム運用コスト,ネットワーク・コスト,応答性能などのバランスがとれたグローバル・ネットワークを求めている。

 拠点が国内だけなら,多くの企業が,業務の中枢となる拠点を性能や信頼性を重視したネットワークでつなぎ,その他の小規模拠点はベストエフォート型の安価な回線で接続するだろう。この“メリハリ・ネットワーク”の考え方は,国際ネットワークには持ち込みづらかった。国際WAN回線の料金が高い,伝送遅延が大きく性能が出にくい,対地国(接続相手の国や地域)では国内ネットワークの整備が進んでいないなど,国際通信に特有の様々な課題があったからだ。

 ところが,その状況が変わってきた。ポイントは「接続先国内での接続メニューの充実や料金の低廉化」や「海外データ・センターの充実」である。データ・センターについて言えば,アウトソーシング事業者のほか,国際通信事業者が各国へのデータ・センター設立を急ピッチで進めている。さらにはデータ・センター間を結び,仮想化などの最新技術をつぎ込んで,世界をまたにかけたクラウド・コンピューティングを実現することまで視野に入れる。

 こうした仕組みをうまく使えば,コストを抑えつつ,日本国内に近い国際ネットワーク環境を手に入れられる(図2)。実際,グローバル展開で先行する企業ユーザーの多くが,様々な手段を講じて,業務に堪える品質の国際ネットワークを,最小限のコストで実現している。

図2●国際ネットワーク強化の土壌が整いつつある<br>国際WAN回線や対地国のアクセス回線の料金が高い,利用できる接続メニューが少ない,伝送遅延が大きいといった課題は解決されつつある。
図2●国際ネットワーク強化の土壌が整いつつある
国際WAN回線や対地国のアクセス回線の料金が高い,利用できる接続メニューが少ない,伝送遅延が大きいといった課題は解決されつつある。
[画像のクリックで拡大表示]