PCサーバーの仮想化技術は主に仮想化ソフトによって提供される。米ヴイエムウェアのVMwareが市場を牽引する。一方で、ハードによって仮想化技術を実現するアプローチを採るのが日立製作所の「Virtage(バタージュ)」だ。基幹系への仮想化技術導入においては、両者の違いを把握し、適不適を判断する必要がある。
PCサーバーへの仮想化技術の導入率は現在、全ワークロードのおよそ16%、それが2012年には50%程度にまで伸びると予想される(米調査会社ガートナー調べ)。米ヴイエムウェア製の仮想化ソフトに対抗し、安価な米マイクロソフトのHyper-Vや米シトリックス・システムズのXenが登場したことで、中堅・中小企業の仮想化を後押しするからだ。
しかし、今後の導入検討が進む基幹系システムにあっては、どの仮想化技術を導入するかについて、仮想化ソフト以外のアプローチにも視野を広げる必要がある。その一例が、日立製作所の「Virtage(バタージュ)」である。メインフレームが持つ論理分割技術によって仮想化機能を強化するアプローチを採っている。
すでに実績がある技術をオープンシステム上に再構築することで、「これまでに蓄積したシステムの開発・運用ノウハウを最大限活用する」(日立製作所の上野仁エンタープライズサーバ事業部第二サーバ本部第三部担当部長)ことを狙う。
技術の違いが運用環境を左右する
こうしたアプローチの差が、サーバー仮想化の実現方法や運用環境の差になって表れる(図1)。ソフトによる仮想化技術では、複数のCPUを複数のOSが切り替えながら使う共有モードで動作する。I/Oについては「ハイパーバイザーエミュレーション」と「サービスVM」のいずれかのモデルで実現している。
いずれも、OSやアプリケーションに対して、ハードウエアの存在を極力見えないようにする考え方だ。仮想化によって、アプリケーションの移植性が高まり、「ハードメーカーによる囲い込みから解放される」とされるのは、このためだ。
これに対し、Virtageにおけるハードによる実現手法では、上記の共有モードのほかに、一つのOSが特定のCPUを使う「占有モード」を持つ。I/Oについても、ハードでアドレスを変換する「パススルー」モデルを採る。OSやアプリケーションにハードの存在を見せることで、「従来の物理サーバーと同じ考え方で、仮想化環境を利用できる」(上野担当部長)ことになる。
基幹系システムが求める高信頼性の実現には、ハードの存在が見えることが重要だ。仮想化の課題に挙げられるデータベースサーバーへの適用や、障害発生時の問題の切り分け、ホットスタンバイ構成の実現などが容易になるからだ。ソフトによるエミュレーション方式では、制御系コマンドの取り扱いなどが困難になるのが、その理由である。