電気自動車(EV)の充電設備を融通し合う仕組みが動き出した。コンビニエンスストアのスリーエフやローソンのほか、東京電力など13の企業・団体が、自社の充電設備を貸し出す実証実験が始まっている。設置数が少ない充電設備を有効に活用することで、利用できる地域が限定されるというEVの欠点を補う。充電設備の認証・管理システムは、NTTデータが開発した。

 この実証実験は、経済産業省資源エネルギー庁が2009年度に実施する、電気自動車普及環境整備実証事業の一環だ。2010年の1月18日から2月26日まで実施する。東京都内8カ所、神奈川県内15カ所、大阪府1カ所のそれぞれに、ICカード認証機能付きの充電設備を設置。それらを携帯電話の通信技術を使ってネットワークに接続し、NTTデータのデータセンターにあるサーバーに、認証データや利用ログを集める。

写真1●複数の企業が電気自動車(EV)充電設備をお互いに貸し出す
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 スリーエフやローソン、東京電力、神奈川県、横浜市、NTTル・パルクやテルウェル東日本など、参加企業・団体が所有する170台のEVが、実業務の中で相互乗り入れを実験する(写真1)。NTTデータによれば、170台という台数は、関東地区で2009年度に出荷されたEVの4分の1に当たる。

写真2●スリーエフのEVがローソンの充電設備を利用する
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 実験に参加するEVは、搭載するバッテリーの充電容量が不足してきたら、他社の充電設備を利用して充電する。スリーエフの営業担当者が乗るEVを、ローソンの店舗にある充電設備で充電するといったことが可能になる(写真2)。

 これまでは自社の充電設備しか利用できないため、EVを導入する台数も、利用する地域も限定されていた。

 例えばスリーエフでは、店舗担当マネージャが通常、七つの店舗を管理し、週に2回ずつ各店舗を訪れて指導する決まりになっている。多くの店舗を巡回したくても、EVの電池残量が少なくなると、いったん自社の充電設備があるところまで戻らなくてはならなかった。

ICカードを使って充電できる時間を決定

 実験では、ICカードを使って充電器利用の可否を判断する。EVの運転者は、充電器の設置場所に着くと、配布されたICカードをリーダー部分にかざす(写真3)。充電器はICカードから読み取った情報を、携帯電話網を通じてNTTデータの認証・管理システムのサーバーに送信し、認証を求める。

写真3●ICカードで認証する
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 認証に成功すると、充電器上部にある液晶画面に充電可能な時間がメニュー表示される。希望する充電時間を選択すると、ケーブルが取り外せる仕組みだ。充電を完了したら、ケーブルを元に戻す。

 充電器は、ICカードの利用者ごとに、認証履歴や充電した時間や日時のログを保存する。ログデータは定期的に、認証・管理システムのサーバーに送信され、データセンター側で集計する。これは実用化時に、他社の充電器で利用した電気料金を、企業間で精算するために使うことを想定したものだ。

 ICカードの読み取り機能は、今回の実験のために、独自に充電器に手を加えて取り付けた。充電器は、高砂製作所と豊田自動織機の製品を採用している。参加する各社とNTTデータは、運用の手間やコスト、システム要件などを検証するという。