KDDIは、地域WiMAXを使った無線通信サービス事業の支援サービスに本腰を入れている。「KDDI地域WiMAXソリューション」と銘打ったこのサービスは、2009年6月にケーブルテレビ事業者のひまわりネットワークとキャッチネットワークを皮切りに、福井ケーブルテレビでも導入された。近々大分ケーブルテレコムでも採用されることが決まっている。

 KDDI地域WiMAXソリューションの主なサービス内容は、ドングルなどの通信端末の提供、基地局の設置、ハンドオーバーを制御するゲートウエイ装置(ASN-GW)や認証機能などを提供するCSN(Connectivity Service Network)装置と呼ばれる通信システムの構築・運用である。特徴は、通常地域WiMAX事業者がそれぞれ構築・運用することが多い通信システムを複数の地域WiMAX事業者で共有することである。通信システムはKDDIのデータセンターに設置しており、運用もKDDIが請け負う。KDDI 理事 ソリューション事業本部 顧問の鬼頭達男氏は、「通信システムの共有によって、地域WiMAX事業者はサービス提供が容易になり、拡張性も確保される」とメリットを強調する。

 例えばゲートウエイ装置やCSN装置は利用料が必要だが、初期投資としては自社のサービス提供エリアに設置する基地局の費用で済む。また、通信システムと基地局、通信端末はKDDIで接続検証済みであるために、サービス開始までの期間が短くなる。「通信端末は、KDDIがまとめて調達することでコスト低減が図れる」(鬼頭氏)。また、KDDIのシステムを利用すれば認証機能を持つCSN装置を共有するため、地域WiMAX事業者間のローミングが可能になっているという。CSN装置はUQコミュニケーションズの通信システムと接続できるように設計しているため、同社とのローミングも容易に実現できるという。

 KDDIが地域WiMAX事業者の支援サービスに乗り出した背景には、WiMAXのノウハウに加えて基地局設置場所の適切な選定に関するノウハウが生かせることがある。さらにKDDIの固定電話サービス「ケーブルプラス電話」を提供しているケーブルテレビ事業者が多く、地域WiMAX事業者を兼ねている場合も多いことから、採用が見込めるという考えもあった。

 ただし、地域WiMAX事業は大分ケーブルテレコムのような新規参入よりも、既に免許を取得して基地局も設置済みの事業者が大半を占めている。KDDIのサービスを利用するために基地局を破棄することは考えにくい。これに対してKDDIの鬼頭氏は、「約40社が既に基地局を設置していることは把握している。しかしその中で、基地局を1、2局しか設置しておらず、サービス展開に足踏みをしている事業者は多い。そうした事業者には十分採用される余地がある」と述べる。通信システムの利用料は相対取引であるものの、共有する事業者の数が増えれば、1社当たりの利用料も低減できる可能性があるという。

 今後KDDIは利用する事業者を増やすとともに、提供できる通信端末や基地局の種類を増やしていくという。例えばこれまで基地局は韓国のSamsung Electronics製を扱っていたが、NEC製も新たに採用することにした。また今後は、小型の基地局開発に取り組む。都市部では大型基地局でカバーできないすき間ができる。こうしたところに設置することを想定している。