2009年初頭の第3世代携帯電話(3G)ライセンス発給後,中国では3Gで様々な動きが顕在化している。中国移動(チャイナ・モバイル)がアプリケーション・ストア「Mobile Market」を開設するとともに,自社モデルのスマートフォン「OPhone」の販売を開始。一方,競合の中国聯通(チャイナ・ユニコム)は2009年10月末,ついにiPhoneの販売を開始した。

(日経コミュニケーション編集部)


町田 和久/情報通信総合研究所 主任研究員
写真1●中国移動の3Gネットブックの広告
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 中国の3Gでは,各通信事業者ともまず高速化のメリットが分かりやすいUSBタイプのデータ端末や3Gモジュールを内蔵したネットブックの販売から注力し始めた。2008年の商用実験からTD-SCDMA方式の3Gを提供してきた中国移動は,5月に携帯電話,データ・カード,ネットブックの販売を本格的に開始(写真1)。一方,2009年4月と10月にそれぞれCDMA2000方式,W-CDMA方式の正式サービスを始めた中国電信(チャイナ・テレコム)と中国聯通も,同じような形で端末を展開している。3社とも通常端末では既存の2GのGSM方式などとのデュアル対応から始め,今後,タッチ・スクリーン機能搭載のハイエンド端末やスマートフォンを中心に強化していく見込みである。

 ただし各社とも,3Gのユーザー数は2GやPHSに比べればまだごくわずかである。8月に3社合計で100万を超えた程度だ。3G事業の成否は,今後の端末や周辺機器,モバイル・インターネットの展開などにかかっている。ここ数年,山寨機(さんさいき)と呼ばれる非合法端末を含めてスマートフォン端末が拡大している。ユーザーが好みに応じてアプリをスマートフォンに簡単かつ安価にダウンロードできるアプリ・ストア形式のビジネスモデルは,これからの中国の携帯事業を語るうえでのポイントとなることは間違いない。

電信と聯通もアプリ・ストアを計画

写真2●OPhoneのトップ画面(イメージ)
写真2●OPhoneのトップ画面(イメージ)
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 中国移動は9月,上海など一部地域で「OPhone」を発売した。OPhoneは,Androidを一部中国仕様化したOMS(Open Mobile System)プラットフォームに基づくスマートフォン。iPhoneと同様,アプリ・ストアから好きなアプリを自由に選択・搭載できるタッチ・スクリーン式の端末である(写真2)。

 OPhone発売に先立って中国移動は8月中旬,通信事業者のアプリ・ストアとしては世界でも先駆けとなる形で大々的に「Mobile Market」(以下,MM)を開始した(写真3)。このMMは,OPhone向けだけでなく,Symbian,Windows Mobileなど他の携帯OS向けアプリやゲームも対象とする。最近の報道によると,開設後2週間時点でMMに登録した個人開発者は1万7000,企業は1107社。同約1カ月時点でのアプリ・ダウンロード数は23万回(1本当たり143回),アプリが1600本,音楽が1万曲,動画が2万本という。

写真3●Mobile Marketのトップ・ページ
写真3●Mobile Marketのトップ・ページ
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 中国移動の競争相手である中国電信も,9月初めに「天翼空間応用商城」(eSurfing Space Application Market)の名称で同社のアプリ・ストアのベータ版(試行版)の営業を開始した。中国電信は,カナダのリサーチ・イン・モーションや米パームなどからスマートフォンを調達する意向を示している。

 10月末にiPhone 3Gと同3GSの販売を始めた中国聯通も,米アップルが運営する「App Store」だけでなく中国国内向けアプリ・ストア「沃商城」(Wo Store,Woは同社の3Gブランド名)を開設すると伝えられている。

 ただし,iPhoneの山寨機が大量に出回っていることは同社には大きな問題だ(流通ルートが非正規なだけで端末は正規品)。山寨機では2Gで事業者を自由に選べるし,無線LAN機能が搭載されない正規品と違いアプリも無線LAN経由でダウンロードできる。この問題にどう対処していくかが,iPhoneの展開にとって非常に重要になる。