マネジメント/情報システム分野で、ITpro読者が2010年に最も注目したいITキーワードとして挙げたのは「クラウド・コンピューティング」「プライベート・クラウド」などクラウド関連のキーワードだった。ベスト10のうち、四つをクラウド関連が占め、関心の高さをうかがえる。「国際会計基準(IFRS)」の躍進ぶりも目を引く。

表1●2010年に注目したいマネジメント/情報システム分野のITキーワード
表1●2010年に注目したいマネジメント/情報システム分野のITキーワード(有効回答数=2803)
(有効回答数=2803)
表2●2009年に注目したマネジメント/情報システム分野のITキーワード
表2●2009年に注目したマネジメント/情報システム分野のITキーワード(有効回答数=2803)
(有効回答数=2803)

 今回の調査ではクラウド・コンピューティング関連のキーワードとして、昨年も挙げた「クラウド・コンピューティング」と「SaaS(Software as a Service)」に加えて、「プライベート・クラウド」と「PaaS/IaaS(Platform as a Service/Infrastructure as a Service)」の二つを追加した。結果的に、四つのキーワードすべてがベスト10に入った。この分野への注目度がいかに高いかが分かる。

「プライベート・クラウド」に期待の声

 トップは断トツで「クラウド・コンピューティング」。全回答者の6割の票を獲得した。それでも「2009年に注目したキーワード」より得票数が若干減っているが、クラウド関連のキーワードを増やしたことで票が分散したためとみられる。

 2位に入ったのは、企業内に構築したクラウド・コンピューティングの仕組みである「プライベート・クラウド」。企業が本格的に自社システムをクラウド環境に移したり、新たに構築する際には、プライベート・クラウドの形を採るケースが多くなる見込みだ。このキーワードが上位に入ったのは、2010年以降にクラウドの本格利用を考えている企業が多いあかしと言えよう

 5位の「SaaS」は、「2009年に注目したキーワード」の順位の3位からやや後退した。キーワードとしての新鮮味は薄れ、実用期に入りつつあるからだろう。プライベート・クラウドとともに今回追加した「PaaS/IaaS」は8位に入った。企業で本格的にクラウドの利用を始める機運の高まりとともに、クラウド環境に対して開発者の注目度が一段と高まっていることを示している。

 すでに多くのITベンダーが「クラウド」をうたった製品やサービスを提供している。利用する側は自社にとっての利点とデメリットを冷静に見定めた上で、ニーズに最も合致し、リスクの少ない製品やサービスを選ぶべきだろう(関連記事:「『クラウド』という技術はない」「2010年に押さえておきたいクラウドのエッセンス」)。

IFRSが7位から3位に躍進、「見える化」も手堅い

 「プライベート・クラウド」と僅差で3位に付けたのは「国際会計基準(IFRS)」である。「2009年に注目したキーワード」の順位の7位から3位に躍進した。金融庁が「2015年にもIFRSの強制適用(アドプション)を開始する」ことを示唆したロードマップを2009年に示したことで、日本でもIFRS対応の機運が一気に高まった(関連記事:「5つのキーワードで理解するIFRS動向」)。

 2010年には条件を満たす企業に対するIFRSの任意適用も始まる。強制適用の可否を判断する2012年、さらに適用が決まった場合の開始時期と見られている2015年に向けて、2010年はIFRS対応に向けた活動が着々と進みそうだ。

 クラウドやIFRSと並んで、4位に入ったのは「見える化」。得票数は減ったものの順位は「2009年に注目したキーワード」の順位より一つ上がった。経営者にとって永遠のテーマとも言える見える化が上位に入ったのは、現在も続く景気低迷と無関係ではないだろう。厳しい時代だからこそ、余計に社内外の状況を可視化して、効率的で機敏な経営につなげたいという経営層の思いが裏にある。日本ではなかなかブレークしそうでしないBI(ビジネス・インテリジェンス)が、見える化を具現化するツールとしてようやくブレークする可能性も大いにあるだろう。

 ベスト10圏外ではあるが、要求分析に関する知識体系「BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)」が14位に入ったのも注目される。ビジネスとITとのギャップをいかに埋めるかは永遠のテーマ。BABOKはその解決の糸口につながるとの期待が高まっている。昨年末に日本語版が登場し、日本での資格認定試験も検討が進んでいる(関連記事:「『ビジネスアナリスト認定試験で会員3000人を狙う』、IIBA日本支部の福嶋代表理事」)。回答をみると「2010年に注目している」が「2009年に注目した」の倍以上あり、2010年には採用事例が増えるとみられる。