ITエンジニアに必要な基本的なスキルとして必ず挙げられるものに,コミュニケーション・スキルがある。当然のことながらRFPの作成や提案書の評価においても,「読む・書く・話す・聞く」の四つのコミュニケーションは非常に重要である。いやそれ以上に,これらの作業はほとんどコミュニケーション活動の固まりであると言ってもよいだろう。
RFP作成側(ユーザー企業側)から見て何がコミュニケーションの対象となるのか,読む・書く・話す・聞くのそれぞれについて,主なものを見てみよう。
(1)読む
・ベンダーからの提案書や企画書,RFI(情報提供依頼書)への回答書などの提示物
・現行(旧)システムの要件定義書や基本設計書などのドキュメント類
・内部統制やセキュリティ・ポリシーなどの社内標準文書
(2)書く
・RFP作成プロジェクトの計画,マスター・スケジュール
・RFI
・RFP
・議事録や会議資料
・社内向け(上司や役員向け)の稟議書,ベンダー評価報告書
(3)話す
・ベンダーへの依頼や説明(RFP配布時の説明など)
・エンドユーザーへの各種説明
・役員会での説明
(4)聞く
・エンドユーザー・ヒアリング
・ベンダーのプレゼンテーション
このほかにも,チーム内の日常的な作業,Q&Aのやり取り,そして事務局作業の段取りなどコミュニケーション能力が必要とされる作業は多岐にわたる。このコミュニケーション能力の優劣がRFPの品質をはじめとする調達活動の成功を左右するといってもよい。
本連載の「RFP作成からベンダー選定におけるプロジェクト管理 プロジェクト・マネージャの役割」にて,RFPのプロジェクト・マネージャの最も重要な役割はコミュニケーションのハブとなることであり,ファシリテーション能力の重要性を指摘した。
「話す・聞く」を主体とするファシリテーションもさることながら,RFPという文書を作成し,提案書という文書を受領するという,ユーザー企業とベンダー企業,つまり法人間のコミュニケーションにおいては,「読む・書く」というコミュニケーション・スキルもまた重要かつ決定的な役割を果たす(図1)。