新しい個人ユーザー向けサービスに見せかけながら,その実態はMVNE(仮想移動体通信支援業者)事業の拡大を狙った“見せ球”──。日本通信が開始したIP電話機能付き携帯データ通信サービス「もしもしDoccica」は,そんな性格を持つ(関連記事)。

 同サービスでは,IP電話の安価な通話料や安全性を売りにするという。しかし,外出先でパソコンを開いてマイクとヘッドホンで通話したいユーザーがさほど多いとは思えない。実は,日本通信にはNTTドコモとの相互接続で実現できる機能とサービスの可能性を,他のMVNO(仮想移動体通信事業者)にアピールしたいという狙いがある。発表会でサービスの説明をした福田尚久常務取締役CMO兼CFOも,「確かにその要素は少なくない」と打ち明ける。

 MVNOが音声通話を扱えるようになれば,例えば音声のやり取りを管理する機能を加えたCRM(顧客関係管理)やERP(統合基幹業務システム)を簡単に開発できる。従来のように構内交換機(PBX)を組み合わせて使う必要はない。

 2010年初頭には,留守番電話をボイスメールで送る機能やFAXをPDF化する機能を,もしもしDoccicaに加える。それらと連携した業務アプリの登場も考えられる。

 さらに,2010年前半には“本命”が登場しそうだ。それは,もしもしDoccica対応のAndoroid端末やWindows Mobile端末。音声通話,データ通信,アプリと,携帯端末に必要とされる機能のすべてをMVNOが一元的に制御し,独自の端末を開発できる。この自由度に魅力を感じ,数多くのプレーヤが参入すれば,これまで目立った動きがなかったMVNOの飛躍が期待できそうだ。