日経BPガバメントテクノロジー編集長 井出一仁

 地域主権を“一丁目一番地”の政策に掲げる鳩山民主党政権の誕生により、2010年は電子政府・電子自治体の強化に向けた取り組みが、一気に加速しそうだ。

 鳩山内閣は2009年9月に地域主権の基本方針を閣議決定し、「明治以来の中央集権体質から脱却し、地域の住民一人ひとりが自ら考え、主体的に行動し、その行動と選択に責任も負う『地域主権』へと、この国のあり方を、大きく転換」していくことを宣言した。

 事業仕分けで話題を振りまいた行政刷新会議も、「政府のすべての予算や事業を見直し、税金の無駄使いを徹底的に排除するとともに、地方にできることは地方にゆだね、真の地域主権国家を築くための改革を推進」するのが役割である。11月には具体的な施策を検討する「地域主権戦略会議」を内閣府に設置し、議長に鳩山首相、副議長には原口一博総務大臣・内閣府特命担当大臣(地域主権推進)が就いた。

 現時点で戦略会議の各種文書には「電子行政」や「IT(ICT)」の文字は見当たらない。しかし、中央省庁・地方自治体の行政の効率化・高度化や、地域への円滑な権限移譲などは、ITの活用なしには進まない。具体的な施策への落とし込みが始まるにつれ、電子政府・電子自治体を強化する方策が姿を現してくるはずだ。実際、戦略会議の副議長を務める原口大臣が12月に公表した「原口ビジョン」には、施策例として「電子行政による行政刷新」が掲げられ、2014年にすべての申請処理を電子化し、24時間365日のオンラインサービスを利用可能にするとの目標が記されている。

 鳩山政権のIT政策はまだ明らかにされていないが、情報/IT面のフレームワークとなりそうな考え方は、2009年10月の鳩山首相の所信表明演説に出てくる。「行政情報の公開・提供を積極的に進め、国民と情報を共有するとともに、国民からの政策提案を募り、国民の参加によるオープンな政策決定を推進」するというくだりである。これは、米オバマ政権の「オープン・ガバメント」政策や、自民党政権下でまとめられた「i-Japan戦略2015」にも通じるところがある。

 オープン・ガバメント政策で先行する米政府は、透明性を高める施策として、政府支出を公開する「USAspending.gov」や景気対策法に基づく支出を公開する「Recovery.gov」、政府が扱う情報・データを公開する「Data.gov」などのWebサイトを矢継ぎ早に開設。さらに、政策決定過程への国民参加を促すために、Webサイトを活用した双方向型のコミュニケーションにも実験的に取り組み始めている。日本の経済産業省も、「電子経済産業省アイディアボックス」の名称で、電子政府実現のための取り組みについてWebサイト上で国民と議論する実験を2009年10月から1カ月強実施した。

 こうした「行政の見える化」とそれを実現するためのIT活用は、米国などの先行事例も参考にしながら、2010年以降、民主党政権によって強力に推し進められることになるはずだ。