英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
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ラリー・ストーン 英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
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ラリー・ストーン

 最新技術とブロードバンドで,会社以外の場所で働くことが可能になった。例えば子供を持つ主婦も半日だけ自宅で働ける。よく言われる「ワークライフ・バランス」だ。通勤などの移動を減らせばCO2の排出量削減にも貢献できる。

 「仕事」という概念は,実はそれほど古いものではない。産業革命までは,家庭が生産現場だった。仕事と個人生活は自然に絡み合い,人々はその中で人生の意味を見出していた。

 ここ20年に起こった産業と技術の発展によって,以前のバランスが復活するのではないかと考えている。日本や英国などのナレッジ・ワーカー(知的労働者)には,同じオフィスにいて実績を管理・測定しようとする上司は要らないからだ。

社会は2年サイクルで進化する

 社会の進化の速度は,一般的な人が最新技術に触れる年齢と同じという説がある。20年前は16歳ぐらいだったが,今では生まれたばかりの子どもが“クリック・デビュー”すると言われるほどで,平均的には2歳で初めてコンピュータで遊ぶ。つまり,将来的には2年サイクルで社会変革が起こる可能性がある。それほど現代の変化は激しい。

 例えば,勤務時間や勤務場所を柔軟に変えられるフレキシブル・ワーカーが登場している。1人で100万人を相手に仕事をする人も間もなく出現するそうだ。1本の光ファイバ上で毎秒10テラ(T)ビットの情報が飛び交い,我々はわずか1年間で過去5000年間に生み出した以上の情報量を生成する。

 Web 2.0が実現する世界には無限の機会がある。人々は互いに情報を通じて刺激し合い,仕事だけでなく,コミュニケーションも柔軟に実現できるからだ。FacebookやYouTube,Flickrによって,我々の社会的なつながりは既に急拡大している。

 臨場感があるテレビ会議システムを使えば,リビングルームからでも仕事のパートナと共同作業ができるだろう。障害のある人や遠隔地に住んでいる人も,経済的に自立できるようになる。どこにいても職場環境にアクセスできるからだ。ホーム・ワーキングをしている人は既にこれを実行している。

 有能な人を招致したいと考えている地方自治体も,遠くにいながらにしてその才能を得られる。才能を保証する学歴は,今後は不適切な基準になる。何しろ,専門知識は2年で倍増する時代が来ているのだから。

 地方で利用されていない学校や図書館,コミュニティ・センター,駅などはアイデアのある人には価値が高い。こうした場所が地域の職場として再生され,地方の活気が戻るようになる。

 家庭生活にも変化が現れる。親は子供たちと自宅で話す機会が増えて子供の犯罪が減少する。地域コミュニティは小規模なので,まとまりのある生活モデルを作りやすい。仕事をしながら地域活動にも参加できる。

 技術革新によるワークライフ・バランスの変化は,私たちに様々な可能性と変化をもたらすに違いない。

ラリー・ストーン(Larry Stone)
英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門 プレジデント
 最近,英国の政治家とロンドンの日本財団に出向き,経済危機について講演した。当然ながら政治について質問があった。驚いたのは,一般的な認識とは逆に,日本人が直接的に核心を突いた質問をしたのに対し,英国人が遠回しな質問をしたことである。人間の気質も,技術進化によって融合しつつあるのだろうか。