Forrester Research, Inc.
ジェームズ・スタッテン プリンシパル・アナリスト
クラウドコンピューティングを語る上で最も難しいのは、真の姿を定義することだ。どのようなカテゴリーのサービスが存在し、ビジネスモデルは何で、企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。
フォレスターはクラウドコンピューティングを、「標準化されたIT能力(サービス、ソフトウエア、インフラストラクチャ)を、インターネット技術を使って、従量課金制、セルフサービス方式で利用者に提供するもの」と定義する。従量課金制とは、利用者がサービスを利用する上で長期契約を結ぶ必要がないことを意味する。セルフサービスとは、利用者は自動化されたツールを使うだけでサービスを始められ、人を介したり、電話窓口に連絡したり、サービスチケットを買ったりする必要がないことを指す。
米国立標準技術研究所(NIST)はクラウドサービスを、(1)ソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS)、(2)プラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)、(3)インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス(IaaS)の3つに分類する。SaaSは完成したアプリケーションを、PaaSはアプリケーションを構築・展開・管理する環境を、IaaSはオンデマンドの仮想ホスティング環境を提供する。
フォレスターはさらに、PaaSとIaaSの間にIT運用に相当するサービスが、SaaSとPaaSの間にミドルウエアに相当するサービスがあると定義する。
IaaSやPaaS、さらに下記に挙げるIaaSを補強する4つのサービスは、SaaSほど市場が成熟していない。企業顧客に対してマルチテナント型のパブリックインフラストラクチャを受け入れてもらうよう努力することが、これらサービスの普及の鍵となる。
(4)クラウド・ラボ
アプリケーションの研究とテストを行う環境を提供するサービス。料金は1プロセサ当たり1時間0.1ドル未満が目安。
(5)データベース・アズ・ア・サービス
オンデマンドで利用できるマルチテナント型のデータベース。料金は1Gバイト当たり月額0.1ドル未満が目安。
(6)デスクトップ・アズ・ア・サービス
マルチテナント型の仮想デスクトップ環境を提供するサービス。料金は1台当たり月額100ドル未満が目安。
(7)ストレージ・アズ・ア・サービス
マルチテナント型ストレージで、ストレージに対するアクセスや管理はセルフサービス形式。料金は1Gバイト当たり0.1ドル未満が目安。
以下に挙げる4つのサービスはSaaSを補強するミドルウエアに相当する。一部顧客を増やしているサービスがあるものの、普及率はまだ低い。
(8)ビジネス・プロセス・マネージメント・アズ・ア・サービス
セルフサービスで利用できるビジネス・プロセス・マネージメント・ソリューション。料金は月額1000ドル未満が目安。
(9)クラウド・ビリング
マルチテナント型の請求・支払いプロセスサービスで、Webサービス経由で利用できる。料金は1トランザクション当たり支払額の2%未満が目安。
(10)ディザスタ・リカバリー・アズ・ア・サービス
インターネット経由で利用できる物理/仮想サーバーを復旧するサービス。仮想マシンと共有ストレージを使用する。料金は月額1000ドル未満が目安。
(11)インテグレーション・アズ・ア・サービス
インターネット経由で利用できるミドルウエアで、Webサービス間の連携を行う。無料のものもあるが、料金は月額1000ドル未満が目安。
企業はまず、これらサービスが自社の業務を強化できるか判断し、次にアプリケーションの開発マネジャーとアーキテクトが、自社のアプリケーションをサービスに適合可能か検証すべきだ。アプリケーションが対応可能で、自社のニーズも満たすようであればサービスを利用してもよい。
◆本記事は,“TechRadar For Infrastructure & Operations Professionals: Cloud Computing, Q3 2009”を日経コンピュータ編集部で翻訳・構成したものです。