日経コンピュータとITproは2009年11月27日~12月15日の19日間、国策の次世代スーパーコンピュータに関するアンケート調査を行った(関連記事)。政府が無駄な予算を国民に公開して判定する行政刷新会議の事業仕分けで、事実上の凍結判定を出したにもかかわらず(関連記事)、研究者たちの猛反発を受けて、復活を示唆する発言をし出したためである(関連記事)。

 アンケートには2300件を超える声が寄せられた。その結果を集計すると、凍結に賛成が54.9%、凍結に反対が38.5%と賛成派が多かったものの、意見は真っ二つに割れた形となった。しかし、賛成派と反対派で共通していたのは、いずれも8割程度が「議論が足りない」としていたことだ(関連記事)。

 読者が議論すべきと考えるのはどのような論点においてなのだろうか。読者が自由記述で多く論じていた「なぜ国策スパコンが必要なのか」「世界一を目指す理由」「予算の妥当性」「事業仕分けに猛反発した関係者たち」「読者が必要と考えるスパコン像」---の5つの論点を中心に、読者の声を取り上げる。

なぜ国策スパコンが必要なのか

 まず、国費を投じる国策スパコンの開発理由について、説明不足であるとする声が多い。国家戦略としての理由、技術振興としての理由の両面で、国民が納得できる説明を求めている。

凍結賛成派

・この末期的な不況の折、景気回復へのお金が必要であり、しばらく凍結がいいと思われる。

・なぜ「スパコン」なのかわからない。がんを治すとか、火星に行くとか、目的があるならともかく、全く意味が分からない。

・文部科学省なら、「○○の計算が必要、そのためのスパコンを一番安く調達する」、経済産業省なら、「どんな技術が競争力強化のために必要か、そのための施策で何が適当か」というのが正しい手順と思慮。

・(富士通が開発する)SPARCに国費つぎ込んだところで、SPARCが世界で広く買われて日本に利益をもたらすようになるとはとても思えない。

・数十年来、ハードの進歩にソフトの進歩が追いつかない状態が続いています。国家予算はソフトの研究あるいは教育に投じるべき。スパコンを用いるような特殊用途のソフトではなく、もっと国民に役立つソフトに投資してほしい。

・コンピュータのハードおよびソフトの国際競争において、既に日本は圧倒的に負けている。

凍結反対派

・今回の件は、双方の説明不足がこじれてこんなことになったと思う。文科省は、スパコンの意義をちゃんと説明できなかったし、民主党は科学技術政策の具体的な方針を説明しないまま予算カットを進めてしまった。どっちもどっち。

・国策という観点からどうしたいのか、目的を明確にして進めべきは進め、取りやめるべきは取りやめ、代替となる技術を輸入すればよい。ただし、開発している国も国策でやっている以上、最新版は提供されず、日本という国の持つ技術が地盤沈下することは否めない。

・日本がここで降りたら、スパコンは事実上アメリカの独占になる。それによりスパコンの競争市場がなくなったとき、日本が必要とするスパコンを1兆円出してでも買えるのか。また、せっかくアメリカと伍していける素地のある技術を捨ててしまうのか。

・Aを目指していたら副産物としてB、Cが生まれることは科学の歴史では往々にしてあること。人口経済規模の縮小、国債の肥大化等、未来に希望がもてない中、唯一の希望の芽を摘み取るパフォーマンスは考えられない愚行である。

・直接的に応用が可能な半導体産業をはじめ、科学技術、産業、工学はもちろん、経済、政治、防衛などの基盤技術である。技術の伝承あるいは、今の苦しい時期に、国家が資金を供給して支えることは、次世代の芽を残すという意味で必要である。