Android開発者コミュニティ「日本Androidの会」が2009年12月21日に開催した「日本Androidの会2009年12月のイベント」で、Android端末上で動くAR(Augmented Reality 、拡張現実)アプリケーションのデモを含む発表が4件行われた。すでにiPhoneの上で提供中で注目を集める「セカイカメラ」のAndroid版のデモもあった。ソースコードをオープンソースとして公開するアプリも2件ある。Android搭載スマートフォンによるAR活用の適用範囲が広がりつつあることが感じられた。

2次元バーコードを使うカジュアルなARソフト

写真1●塚田翔也氏(フリーランス)が発表した「Feel Sketch Browser」。塚田氏は、2008年度下期の未踏プロジェクト「音声認識Webアクセスツール「Puppy」の開発」のチーフクリエータを務めた経歴を持つ
写真1●塚田翔也氏(フリーランス)が発表した「Feel Sketch Browser」。塚田氏は、2008年度下期の未踏プロジェクト「音声認識Webアクセスツール「Puppy」の開発」のチーフクリエータを務めた経歴を持つ
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写真2●Feel Sketch Browserの概要。2次元バーコードを認識し、手書きの画像を再現、カメラ画像の上にオーバレイ表示する
写真2●Feel Sketch Browserの概要。2次元バーコードを認識し、手書きの画像を再現、カメラ画像の上にオーバレイ表示する
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 フリーランス・エンジニアの塚田翔也氏が発表した「Feel Sketch Browser」は、一般家庭を含めどこでも、誰でも使える事をねらったARアプリである。例えばPOP(店頭に置く宣伝用アイテム)のAR版、といったカジュアルな用途を想定する。

 コンセプトは意表を突くほど単純だ。PC上で動作するお絵かきソフト「Feel Sketch」で簡単な画を描く。この画の情報を、2次元バーコード(QRコードを元に拡張し、より多くの情報を入れられるようにしたもの)に変換し、家庭用カラープリンタなどで印刷する。この2次元バーコードを、Android端末上のアプリ「Feel Sketch Browser」で認識する。このさいAndroid端末のカメラを活用する。認識された結果の画像を、カメラで撮影した現実の空間にオーバレイで表示する。一連のやりとりでは、リアルな「紙」が登場する一方で、サーバとの通信は必要ない。また、お絵かきソフト「Feel Sketch」と、Androidアプリ「Feel Sketch Browser」は、ともにオープンソース・ソフトウエアとして公開されている(公開サイト)。開発者の塚田氏は「皆さんのアイデアで、どんどん拡張してほしい」と呼びかけた。

 Feel Sketch Browserはこの日、Android Marketで公開された。iPhoneのApp Storeは審査期間が必要となるのに対し、Androidマーケットでは登録したアプリは直ちに公開される。

セカイカメラのAndroid版は「必ずやる」

写真3●頓知・CTOの近藤純司氏。手に持つのは、「セカイカメラ」デモ用の機材。名付けて「近藤くん」
写真3●頓知・CTOの近藤純司氏。手に持つのは、「セカイカメラ」デモ用の機材。名付けて「近藤くん」
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写真4●「セカイカメラ」Android版のデモ。iPhone版と同等の機能をすでに実現している
写真4●「セカイカメラ」Android版のデモ。iPhone版と同等の機能をすでに実現している
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 頓知・CTOの近藤純司氏らは、Android版「セカイカメラ」のデモを披露し、今後の開発の方向性について語った。「セカイカメラ」は、iPhone上ではリリース済みのARアプリで、現実空間の上に「セカイカメラ」だけで見ることができる「エアタグ」を書き残すことができる。

 2009年6月に実施したイベント「Android Bazaar and Conference 2009 Spring」でもAndroid版は披露済み。今回のバージョンは、OpenGL周りの苦労を重ねた成果が含まれるという。「Java言語で記述し、Dalvik仮想マシンの上で動くAndroidアプリは、Objective-Cのネイティブ・アプリケーションが動くiPhoneより、グラフィックス周りに関して難しい部分がある」と説明する。

 Android版の公開時期は未公表だが、デモで見せたバージョンは公開版に近い仕上がりに見えた。

 また同氏は「日本Androidの会でARWG(ARワーキンググループ)を発足させたいが、賛同してもらえるだろうか」と提案。その場に集まった約80名の開発者が拍手で賛同の意を表明した。

写真5●「セカイカメラ」のアプリケーション間通信のコンセプト。異なるアプリが、コンテンツ(エアタグ)を介して結びつくイメージ
写真5●「セカイカメラ」のアプリケーション間通信のコンセプト。異なるアプリが、コンテンツ(エアタグ)を介して結びつくイメージ
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