2009年は、米Salesforce.comや米Google、米Amazon.comといった先駆者に続き、米Microsoftや国内ITベンダーがこぞってクラウド・コンピューティング事業に参入した年でした。基盤技術、セキュリティ、プライベート・クラウドといった技術や用語の定義は、未だ発展途上。2010年に起こるクラウドの動向を読み解く際に必携の知識をおさらいします。

エッセンス:業界への影響度を肝に銘じる

 最初に押さえておくべきクラウドのエッセンスは、その「影響度」にある。単なるマーケティング・タームに留まらない点を肝に銘じたうえで、自身の担当領域に応じて個々の要素技術をかみ砕いて理解する必要がある。

 そこでまず読んでおきたいのが、企業事例、国内外の動向、“規模の経済”の威力、およびIT部門への影響などを横断的に分析した「基幹系を捨てる日 ~エンタープライズ・クラウドの幕開け」。2009年1月1日号の日経コンピュータ誌特集の再掲ながら、約1年前に説いた“先端”は、2010年に広がる“裾野”の姿でもある。

 技術面のエッセンスは、データセンターの構成要素にある。ただサーバー群を効率よく管理するソフトウエアなど肝となる技術は、米Googleや米Amazon.comなど大手クラウド事業者にとって門外不出。このためエッセンスとして押さえておくなら、仕様の標準化が欠かせないネットワーク寄りの知識が2010年に生きる。ネットワークに焦点を当てた「次世代データ・センター技術の全貌」に、障害対応の簡素化に必要な要素をまとめた「“クラウド”のサービス品質を考える」を合わせて読むことで、GoogleやAmazon.comの凄さが実感できるだろう。

トレンド:エコシステムとITベンダー/ユーザーの動向を見る

 トレンド面で押さえておきたいのは、クラウドのエコシステムだ。米Salesforce.comによるOEM提供の意義を説いた「“第二種クラウド事業者”登場、ハードとサービスは完全分離へ」では、米国中心の大手クラウド事業者と国内ITベンダーがWin-Winの関係を築けるエコシステムの姿が語られている。Amazon.comによるクラウド・サービスのアジア進出という動きと合わせて、2010年は選択肢がぐんと増える見通しだ。

 国内ITベンダーの戦略を一気に把握するなら、「メーカー7社が提示する今後1~2年の情報システム基盤像」を一読したい。さらにネットワークの雄であるNTTグループのクラウド戦略をえぐり出した「クラウドに踏み込むNTTグループ」を読むことで、サーバー・メーカーの考える“クラウド”と、通信事業者が考える“クラウド”を概括できるはずだ。

 ユーザー企業のトレンドという意味では、導入の意向などをアプリケーションやインフラなどレイヤー別に細かく聞いたクラウドに関するユーザー調査の分析記事が参考になる。