世界各地の仮想サーバーをポータル画面で一元管理できる「Bizホスティング グローバル」を,NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が2010年1月に開始する。国際的にビジネスを展開している企業ユーザーが,コストと管理の手間を削減しながら社内クラウドを構築するためのサービスとして普及を目指す。

 Bizホスティング グローバルは,世界各地のデータ・センター(DC)で仮想化サーバーをレンタルするサービス。各地域のデータ・センター内のサーバーは,一つのポータル画面で一元管理できる特徴がある(図1)。

 対応するデータ・センターは,米国が西海岸のサンノゼと東海岸のバージニア州,欧州地域がロンドン,アジア地域が香港の3地域4カ所。対応データ・センターは順次増やしていく方針で,2010年内にはシンガポールのデータ・センターを対応させる。

図1●世界3地域の仮想サーバーを一元管理<br>アジア,北米,欧州と3地域のデータ・センターに置かれた仮想サーバーの仕様を統一し,一つのポータル画面で管理できるようにした。将来はディザスタ・リカバリなどの活用を見越して,3地域をまたいだデータ複製の実現も視野に入れる。
図1●世界3地域の仮想サーバーを一元管理
アジア,北米,欧州と3地域のデータ・センターに置かれた仮想サーバーの仕様を統一し,一つのポータル画面で管理できるようにした。将来はディザスタ・リカバリなどの活用を見越して,3地域をまたいだデータ複製の実現も視野に入れる。
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世界中から遅延100ミリ秒で利用可

 かつては,日本のデータ・センターで一元管理すれば良いとの考え方もあった。しかし欧州などの海外拠点から日本のデータ・センターにアクセスすると,「遅延が大きく使いものにならない場合も多かった」(グローバル事業本部グローバルソリューション部サービスディベロップメント部門 関洋介部長)。そのため,世界中どこからでも100ミリ秒程度の遅延で利用できるクラウド型システムを構築できるよう,世界3地域の分散環境を用意したという。

 NTTコムは,仮想ホスティング・サービス自体は以前から提供していた。同社の欧州ユーザーでは同サービスの利用が8割を占めるなど需要が高まっていることから,サービス強化を図った。新サービスでは,2012年度に売り上げ60億円を目指す。これは,同社の主なホスティング事業の中で25%を占める比率である。

サーバーの仕様統一で管理を容易に

 サービス開発に当たっては,海外ネットワークの構築や運営に悩むユーザー企業の利便性向上を狙った。TCO削減や通信の安定性などを実現できるよう,「グローバルでシステムを共通化する手法を取った」(関部長)。

 一般的に,ユーザーの海外ネットワーク担当者が複数地域でデータ・センターを利用しようとすると,各地域のサーバーの機種が異なることから,個別にサービス・レベルの確認や資産管理をする必要がある。一方,Bizホスティング グローバルでは,各地域でサーバーの仕様を統一しているため,地域にまたがる契約やサービス・レベル確認の作業を単純化できる。

 ポータル画面では,複数のデータ・センターを容易に管理できるようにした。各サーバーの負荷などを確認できるほか,仮想サーバーの電源オン/オフや,CPUやメモリーのリソース配分変更といった操作にも対応する。

 国際網を持つ通信事業者としての強みを生かして,NTTコムは各地域にまたがるデータ複製サービスの提供も計画している。ディザスタ・リカバリ対策として定期的に差分データを別地域のサーバーに記録するといった用途を想定する。高遅延の環境下でデータの整合性をどう確保するかなど技術的な課題は多いが,同社は2010年度内の開始を予定している。