バンテックで執行役員情報システム部長を務める加松哲夫氏
バンテックで執行役員情報システム部長を務める加松哲夫氏
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 「システムを使った業務の標準化や統一化、全体最適の実現を進めたい。そうすることが結果的に内部統制やIFRS(国際会計基準)への対応につながるし、原価低減やリスク削減という効果も生む」と力説するのは、物流大手バンテックで執行役員を務める加松哲夫情報システム部長だ。同社は、国内物流を手がけてきた旧バンテック、国際貨物輸送のバンテックワールドトランスポートという2つの事業会社を、持ち株会社バンテック・グループ・ホールディングスが吸収合併して2009年4月に誕生した。加松部長は統合と同時期に独SAP製のERP(統合基幹業務)パッケージ導入を指揮した(関連記事)。

 加松部長は当面の目標としてERPシステムを利用した経営管理の高度化を挙げるが、情報システム部の組織強化にも力を入れている。部内にイノベーション推進課を新設して従来無かったIT活用を検討したり、外部のコンサルティング会社の協力を得て同部の業務の棚卸しに取り組んだりしている。棚卸しから判明したのは、開発や保守に追われて企画業務になかなか力を入れられていない職場の現状だった。

 保守業務などは外注化しつつ、「会社にイノベーションで貢献したい」(加松部長)という理想が実現できれば、IT(情報技術)に精通していて、イノベーティブな発想ができる情報システム部の人材は社内で引っ張りだこになるはずだ。「様々な部署で活躍できる人材を輩出する組織にしたい」と加松部長は話す。情報システム部とユーザー部門の間での人材交流の活性化を図る背景には、「個々の業務が属人化してしまうのはリスクであり、将来的にコスト上昇を招く」という懸念もあるようだ。

Profile of CIO
◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・大きなシステムプロジェクトではステアリングコミッティーを組織して社長(山田敏晴代表取締役)に参画してもらいます。経営トップのコミットメントとボトムアップのバランスを最適化することが大切です

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・イノベーティブな提案が欲しいです。情報システム部のミッションを運用・保守中心の“守り”からイノベーションを起こして会社に貢献するという“攻め”へとシフトしていきたいとからです。運輸業界向けのシステムを手がけるベンダー以外の提案も聞くつもりです。あとはコスト削減につながる提案が欲しいですね
・システム障害についてベンダーはどこかで「しょうがない、防ぎようがない」と考えているような気がします。お客様を前にしている我々としてはそのような考え方では困ります。また障害についてベンダー同士が責任を押しつけ合うこともあります

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・朝日新聞
・ハーバードビジネスレビュー
・日経情報ストラテジー

◆最近読んだお薦めの本
・『最新・米軍式意思決定の技術』(中村好寿著、東洋経済新報社)
 「監視(Observe)」「情勢判断(Orient)」「意思決定(Decide)」「行動(Aciton)」からなる「OODAループ」をこの本で知って興味を覚えました。中期的な「PDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクル」をベースにしながらOODAループを取り入れていくというプロジェクトの進め方が理想的ではないでしょうか。ERPシステムの導入プロジェクトでもこうした考えに基づいて取り組みました

・『組織能力の経営論 学び続ける企業のベスト・プラクティス』(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部編訳、ダイヤモンド社)

◆仕事に役立つお薦めのインターネットサイト
・NECの「Wisdom」

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・日立製作所のユーザー会、コンサルティング会社やITベンダー主催のセミナーなど。自分だけでなく部下にも積極的に参加させています

◆ストレス解消法
・なるべく歩くゴルフ
・美術館巡り