農業や食の安全への関心が高まる中、レンタル農園を利用して野菜を育てる消費者が増えている。郊外の農地を借り、自分で野菜を育て消費する「自産自消」という新しい食のスタイルを取る。ただ野菜作りが簡単とはいえないこともあり、一過性のブームに終わる可能性もある。レンタル農園事業最大手のマイファームは、利用者に向けたコミュニケーションサイトを構築し、「自産自消」の継続を支援する。

写真1●マイファームのレンタル農園の様子
写真1●マイファームのレンタル農園の様子

 京都に本社を置くマイファームは全国26カ所にレンタル農園を持ち、2000人を超える利用者に提供している。週末になると近郊都市部の利用者が家族連れで農園を訪れ、野菜作りや畑の整備に精を出す(写真1)。利用料金は、15平方メートルの農地が、月額3000~6000円である。西辻一真代表自身も、週末には全国の農園に顔を出し、会員と一緒に農作業に汗を流す。

図1●会員向けSNS「あつまれ!マイファーマー」の画面例
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 利用者の多くは、野菜作りの素人。そこで農園の持ち主などが「管理スタッフ」「菜園インストラクター」となって、農作業を手助けする。農園まで足を運べない利用者に代わって、水まきや雑草駆除をすることもある。農機具や肥料なども現地で提供するほか、定期的な収穫祭や講習会も催す。

 加えてマイファームでは、会員向けSNS「あつまれ!マイファーマー」を2009年6月から提供している(図1)。管理スタッフやインストラクター、マイファームの社員もアカウントを作成し、会員と直接コミュニケーションを図る。現在の利用者数は、会員全体の約20%にあたる400~500人である。

「作る喜び」を共有する仕組みを用意

 マイファーマーの利用者は、そこに日記を書いたり、他の会員のブログにコメントを付けたりする。管理スタッフの予定もサイト上で公開されるので、それに合わせて農園を訪れるスケジュールを立てることができる。

 SNS提供の狙いをマイファームの西辻一真代表は、「利用者が一人で、あるいは一家族だけで、『自産自消』を継続することはかなり難しい。人と人をつなぐ仕組みを用意し、野菜を育てる楽しみを共有できるコミュニティが必要だと考えた」と説明する。

 会員限定サービスでありながら、マイファーマーの月間アクセス数は10万PV(ページビュー)という。「農園に興味を持つのは30代の夫婦が多い。特に主婦の利用者が熱心にアクセスしているようだ」(西辻代表)。

 マイファーマーの効果からか、マイファームの会員契約解約率は5%程度。西辻代表によれば、「他のレンタル農園事業者と比べるとかなり低い数値」だという。