4兆円の可能性があるIFRS市場で現在、コンサルティング会社とSIerがコンサルティングのサービスで火花を散らしている。

 アクセンチュアは2009年7月、日立コンサルティングは6月に、IFRS対応のためのコンサルティングメニューをそろえた。「6月からの約2カ月間で、十数社から受注した。出足は好評だ」と日立コンサルティングの伊藤雅彦シニアディレクターは話す。

 大手SIerの電通国際情報サービス(ISID)や住商情報システムは4月から、IFRS対応のために現行システムにどの程度の修整が必要かを診断するコンサルティングサービスを開始している。ISIDの林晃司ビジネスソリューション事業部副事業部長は、「当社の既存顧客500社に対し、担当営業がパンフレットを持って売り込みをかけている最中だ。最低でも今年度中に10社を超える顧客から受注したい」と言う。

図1●顧客のIFRS対応作業とビジネスチャンス
図1●顧客のIFRS対応作業とビジネスチャンス
[画像のクリックで拡大表示]

 コンサルティング段階から顧客に食い込むことができれば、下流のシステム構築サービスの受注まで獲得できる、という期待が各社にある(図1)。

 「まずは今後のIFRS対応プロジェクトがどのくらいの負荷やコストになるかを知ってもらうことが重要だ。ここから、具体的なシステム構築の商談につなげたい」と日立コンサルティングの伊藤シニアディレクターは話す。

 日本ユニシスもコンサルティングサービスのメニュー化を企画している。「ここ何年か、将来のシステム化構想といった、スケールの大きい商談が出てこなくなっていた。IFRS対応の工程は、まさに顧客の中期システム化構想そのもの。この策定に関与できるのは、またとないチャンスだ。IFRS対応の工程作成に関与できれば、その企業のシステム開発案件を、今後5年間にわたって一手に引き受けることも可能だ」と、日本ユニシスの小岩井毅ソリューション開発部担当部長は期待する。

専門家の確保に走るSIer

 コンサルティング会社もSIerも、実施するサービスの内容はほぼ同じ。IFRSの導入企業にどれだけ作業負荷がかかるかを割り出す「影響分析」と、(2015年に強制適用が始まると仮定して)適用開始までにどのような作業が必要になるかをまとめる「ロードマップ作成」が中心である。

 2種類のサービス期間は、合わせて2カ月前後が標準的。料金の総額は1000万円前後が相場だ。

 アクセンチュアなどコンサルティング会社は、会計分野の専門家をこの領域に振り向け、ビジネスの拡大を狙う。過去の会計分野のコンサルティング経験を生かす。

 一方、SIerにはIFRSを熟知した専門家がまだ少ない。TISや日本ユニシスは外部の公認会計士と協業し、コンサルティングサービスを実施していく。ISIDは会計分野に詳しい、社内のパッケージソフト導入を手掛けるコンサルタントを教育し、IFRS対応の専門家として育成する方針だ。

 ISIDの林副事業部長は「会計分野の8人のコンサルタントに、IFRSの認定資格試験を受験させている。現行案件がひと段落した人員から順次、IFRS事業にシフトさせる」と言う。