多くのソリューションプロバイダが,IFRS向けのビジネスに乗り出している。今後数年間で4兆円の市場が生まれる可能性がある。
「IFRSは基幹業務システムや業務プロセスの見直しにまで波及する。間違いなく巨大な市場が誕生するはずだ」(TISの中村清貴エンタープライズビジネスソリューション第1部長)。
「既に始まっているプロジェクトでも、途中からIFRSへの対応が要件に加えられるようになった。既に企業はIFRSへの対応に投資し始めている」(IBMビジネスコンサルティングサービスの西垣智裕マネージングコンサルタント)。
「IFRSをきっかけに、日本のITサービス業界に特需がやってくる。コンサルティングやシステム構築の期間を考慮すると、対応まで時間が足りないくらいだ」(アクセンチュアの鈴木大仁IFRSチーム パートナー)。
2009年6月、2015~2016年にも日本の上場企業に適用する可能性を金融庁が表明したことで、IFRSに一躍注目が集まるようになった(IFRSの概要については、末尾の別掲記事を参照)。
IFRSが適用されると、企業は会計システムだけでなく、IFRSの原則にのっとり業務プロセスも変更しなければならない。売り上げの計上基準や在庫の定義が、現行の日本基準と異なるためだ。IFRSの影響は、販売管理システムや在庫管理システムなどにも及ぶ。
関心が急速に高まる
アクセンチュアは昨年12月、売上高10億ドル(1ドル95円換算で950億円)以上の米国上場企業に所属する経営幹部208人に、IFRS対応コストについて調査した。その試算結果によると、企業のIFRS対応コストは1社当たり1000万~5000万ドル(同9億5000万~47億5000万円)だった(図1)。システムのコンサルティングや変更費用などで、これだけの金額に上る。
仮に日本企業の場合が1社当たり10億円としても、国内にある約4000社の上場企業が取り組めば、今後数年間で4兆円の市場が生まれる。冒頭のITベンダー各社の期待は、的外れとはいえない。
顧客の意識も変わりつつある。IFRS向けのビジネスを本格的に開始したコンサルティング会社やSIerは、「金融庁が今後の方針を発表した直後くらいから、問い合わせが一気に増えた」と口をそろえる。
IFRSへの関心が急速に高まっている状況は数字からも確認できる。日経BPコンサルティングが2009年7月16~23日に、日経BP社のICT総合サイト「ITpro」で実施したアンケート調査では、ユーザー企業のIFRSの認知度は既に62.5%に達した(図2、関連記事「IT専門家4000人に聞く,IFRS対応の実態」)。
仮に2015年にIFRSの適用が始まるとしよう。比較開示期間と定められている2013年と2014年の財務諸表もIFRS準拠で作成する必要がある。
2013年にはIFRSに対応したシステムを稼働させなければ間に合わない。こうしたスケジュール感覚で、国内でも多くのソリューションプロバイダが、IFRS向けのビジネスに乗り出している。
ソリューションプロバイダには、IFRSを機に二つのビジネスチャンスがある。コンサルティングとシステム構築である。各社の具体的な取り組みを見ていこう。