by Gartner
デイヴィッド・カーリー VP兼最上級アナリスト
松原 榮一 リサーチVP

 ガートナーは、今後3年間で企業に大きな影響を与える可能性を持つ「戦略的テクノロジー」を定義している。「大きな影響」とは、ITやビジネスに革新を起こすもの、多額の投資の必要が生じるもの、導入が遅れた場合に機会損失などのリスクにつながるものを指す。2010年に注目すべき戦略的テクノロジーのトップ10は以下の通りだ。

(1)クラウドコンピューティング
 クラウドを利用することでITソリューションのコストが不要になるわけではないが、各ITコストの配分変更と削減が可能になる。また、クラウドサービスを活用すると、企業自身が顧客や取引先へアプリケーションや情報、ビジネス・プロセス・サービスを提供するクラウドプロバイダーとなれる。

(2)高度な分析
 分析用のツールとモデルを使用した最適化やシミュレーションによって、プロセスの実装と実行の全過程における成果やシナリオを検証し、ビジネスプロセスと意思決定の有効性を最大化できるようになる。これは、決まったルールと方針に基づいた第一世代の意思決定、CRMやERPなどのアプリケーションからもたらされる情報に基づく第二世代の意思決定に続く、第三世代の意思決定ステップだ。今後どうなるのか、何が起こるのかといった未来への視点が得られる。

(3)クライアントコンピューティング
 仮想化はクライアントのアプリケーションと機能をパッケージ化する新たな環境をもたらしている。その結果、PCハードウエアやOSの選択も、以前ほど重要ではなくなった。

(4)ITによるグリーン化
 電子文書の利用や出張の削減、テレワーキングといったITの利用によって、環境への取り組みに対する企業の評価を大きく高められる。またITが提供する分析ツールを業務部門が利用することで、商品輸送に伴うエネルギー消費を減らしたり、二酸化炭素を削減したりできる。

(5)データセンター再構築
 近年のデータセンターは、個別の電力供給やUPS(無停電電源装置)、水冷/空冷による温度調節設備が搭載された「ポッド」を基に設計されている。ポッドを増やすことでデータセンターを増設できるため、将来巨大なデータセンターが必要となる場合でも、当初は今後5~7年間に必要な設備だけを構築すればよい。

(6)ソーシャルコンピューティング
 ビジネスパーソンは皆、仕事を進める上で自分の業務環境と、外部の情報にアクセスする環境とが異なることを望んでいない。企業は社内におけるソーシャルソフトウエアやソーシャルメディアの利用と、外部にある企業スポンサー型のコミュニティやパブリックコミュニティへの参加と統合の両方に焦点を当てるべきである。

(7)セキュリティ---アクティビティモニタリング
 従来のセキュリティは外部からの侵入を防ぐものだった。現在はユーザー活動を監視するとともに、以前は見逃されていたパターンを認識できるところまで進化を遂げた。現在、不正な活動の検知と調査を支援する無償の監視/分析ツールが幅広く入手可能であり、リアルタイムアラート機能やトランザクション保留機能を提供するツールもある。

(8)フラッシュメモリー
 ハードディスクに比べて高速で高価だったが、価格差は縮まっている。コンシューマーデバイス分野のみならず、サーバーやクライアントのストレージ階層に新たな層を提供し、スペース、発熱、パフォーマンス、耐久性の面で大きなメリットをもたらす。

(9)可用性のための仮想化
 実行中の仮想マシンを他の物理サーバーに移動させる「ライブマイグレーション」のような新技術を強調する目的で、トップ10に含めた。

(10)モバイルアプリケーション
 2010年末までに、モバイル環境とインターネットを統合した質の高い環境を提供するモバイルコマースに対応した携帯端末の利用者は、12億人に達する。