オープンソースランキング
(2009年1月1日~12月11日)
1位 最新版KNOPPIX 6.0.1の日本語版が公開
2位 [解説]Sun買収により,3年越しでMySQLを手に入れたOracle
3位 「早く帰れるようになった,開発が楽しくなった」---SeasarConで7社が採用事例を発表
4位 人気Linuxディストリビューションの最新版「Ubuntu 9.04」が公開
5位 授業に使える「Linuxサーバー構築標準教科書」,LPI-JapanがPDFで無償公開
6位 「Rubyは変化を恐れない」---RubyKaigi 2009 レポート
7位 Linuxカーネル2.6.29公開,ロゴがペンギンからタスマニアン・デビルに
8位 Web上のサービスをデスクトップ・アプリに,MozillaがPrism 1.0のベータ版
9位 徳島県がRubyの独自開発CMS「Joruri」でサイトを刷新,OSSとして公開へ
10位 会津若松市が冊子「オープンオフィスにしませんか?」をクリエイティブ・コモンズで公開
11位 2年半ぶりのOSSメール・ソフト新版「Thunderbird 3」正式公開,タブ表示や検索高速化
12位 「大手サーバー・メーカー初」,日本HPがフリーLinux CentOSの有償サポート
13位 Googleが「Chrome 2」を公開,約30%高速化
14位 Microsoft,無料ツール「Windows 7 USB/DVD Tool」にGPLコード混入を確認
15位 Firefox3.5正式リリース,「Firefox 3.5の灯」も公開
16位 Google Chrome OSが公開,OSSプロジェクト「Chromium OS」スタート
17位 日本発セキュアOSのTOMOYOがLinuxカーネルに標準採用
18位 Mozilla,次期メール・ソフト「Thunderbird 3」のRC1版を公開
19位 人気Linuxディストロ「Fedora 11」公開
20位 「オープンソースMySQLプロジェクトで役目を果たす用意がある」---Sunを離れた“MySQLの父”がOracleに提案

 2009年、オープンソース/Linuxテーマサイトで最もよく読まれたニュース上位20本を集計した。根強い人気を誇るLinux関連記事に加え、米Oracleの米Sun Microsystems買収、Rubyに関するニュースなどが読者の関心を集めた。

現在進行中のOracleによるSun買収

 2009年4月、米Oracleが米Sun Microsystemsを買収することで両者が合意した。このニュースに「一つの時代の終わり」を感じた方は多いのではないだろうか。Linuxユーザーには、かつてSunのサーバーやワークステーションを利用していたユーザーも多い。JavaやOpenOffice.orgなど、Sunが公開したオープンソース・ソフトウエアはITにとって欠かせないものになっている。

 またSunがなければGoogleも存在しなかったかもしれない。まだ会社を設立していないSergey Brin氏とLarry Page氏に10万ドルを出資してGoogleを育てたのは、Sunの創業者の一人Andy Bechtolsheim氏だ。Googleの現CEOであるEric Schmidt氏は、元SunのCTO(最高技術責任者)である。

 OracleによるSun買収は、当然オープンソース・ソフトウエアのユーザーにとって極めて大きな意味を持つ。とりわけユーザーが大きな関心を持ったのが、MySQLの将来に関してだ。オープンソースのデータベースであるMySQLは、Oracle Databaseと競合するソフトウエアだ。Oracleは2006年、MySQLに買収提案をしていたとされるが失敗。結局2008年にSunがMySQLを買収した。ところが、そのSunがMySQLごとOracleに買収されることになってしまった(関連記事)。

 MySQLを最初に開発した共同創業者のひとりMichael Widenius氏はOracleによる買収に対して反対意見を表明している(関連記事)。欧州委員会は買収がデータベース市場での競争を阻害する可能性について調査中だ(関連記事)。OracleはMySQLに対して現在以上の投資を行うと表明しているが(関連記事)、Widenius氏はMySQLユーザーに対し、買収を承認しないよう求めるコメントをECに送付しようと呼びかけており、2009年12月22日現在、まだこの買収劇は幕を閉じていない。

Rubyアプリケーションが多数登場

 日本発のオープンソース・プログラミング言語Rubyに関する記事にも多くのアクセスがあった。印象深いのは2009年、Rubyで開発された多くのオープンソースの基盤ソフトウエアやアプリケーションが登場したことだ。2009年のRubyKaigiでは、楽天が開発した分散キー・バリュー型データストア「ROMA」や、TISが開発したSNS「SKIP」などが紹介された(関連記事)。徳島県は県のホームページを構築するためのCMS(コンテンツ管理システム)をオープンソース・ソフトウエアとして公開すると表明した(関連記事)。KBMJはECサイト構築パッケージ「エレコマ」を(関連記事)、イーシー・ワンもECサイト構築パッケージ「EC-Rider」をオープンソース・ソフトウエアとして公開すると発表した(関連記事)。

 2009年は、Rubyで構築されたミニブログ・サービス「Twitter」がブレイクしたことも大きな話題だった。

 ひがやすを氏が開発したオープンソースのフレームワークSeasarの記事もランクインした。カンファレンスSeasarConでSeasarを採用した開発事例を発表した7社は「開発が楽しくなった」,「早く帰れるようになった」とその効果を語った(関連記事)。

Linus Torvalds氏が8年ぶりに来日

 2009年はLinus Torvalds氏が、初めて日本で開かれたカーネル開発者の会議「Kernel Summit」(関連記事)と技術カンファレンス「The Japan Linux Symposium」(関連記事)に参加するため8年ぶりに来日したことも大きな話題だった。日経BP社ではIT系媒体が共同でTorvalds氏にインタビュー、その全文を1週間にわたってITproに掲載した(関連記事)。

 Linuxディストリビューションに関するニュースも例年同様、多数アクセスされ、ニュースの1位となったのはCD/DVDから起動するKNOPPIXの記事だった(最新版KNOPPIX 6.0.1の日本語版が公開)。UbuntuやCentOS、Fedoraのニュースもトップ20にランクインした。

 Linuxカーネルに関するニュースもランクインした(Linuxカーネル2.6.29公開、ロゴがペンギンからタスマニアン・デビルに)。タスマニアン・デビルが伝染性の腫瘍により絶滅の危機に瀕していることを訴えるため、linux.conf.au 2009に出席したLinus氏がタスマニアン・デビル「Tuz」への交替を決めたという。もっとも、次のカーネル2.6.30ではおなじみのペンギン「Tux」に戻っている。そのカーネル2.6.30では、日本発のセキュアOSであるTOMOYO Linuxとファイル・システムNILFSがマージされたことも話題になった(関連記事関連記事)。

GoogleがLinuxをベースにデスクトップOSに参入

 また2009年にはGoogleがついにデスクトップOSに参入。LinuxをベースにWebブラウザに特化した「Chrome OS」を公開した(関連記事)。ITproではChrome OSの存在が明らかになった直後,日経BP社のIT系メディア4媒体の5人の記者がChrome OSを分析する緊急連載を掲載した(関連記事)。