次世代のデータ・センターでは,イーサネットが今まで以上に多くの役割を担うことになる。様々なサービスが集中するにつれ,データ・センター内のネットワークは複雑になる。多くのユーザーのシステムが相乗りすることになるため,帯域をはじめとしたネットワーク・リソースを保証する仕組みも必要になる。
こうした課題は,ベストエフォートでフレームを転送する従来型イーサネットを使う限り解決できない。そこで作られたのが「FCoE」と「DCB」である。FCoEとDCBの組み合わせは当面,サーバーからストレージに接続するインタフェースをイーサネットに統一する目的で使われそうだが,将来的にはデータ・センター内のすべてのインタフェースがイーサネットになると見られている。
既に市場に出てきたFCoE対応製品
データ・センター内のストレージとサーバーをつなぐ場合,ファイバ・チャネル(FC)によるSANを使うことが一般的だ。このためデータ・センターにはLANとSANの2種類のネットワークが存在することになる。FCoEは,このSANとLANの統合を狙った,FCのデータをイーサネットで運べるようにする技術である。
実際にFCoEを使ってデータ・センター内のネットワークを構築するには,スイッチとサーバーのアダプタの対応が必要である。それらは既に製品化され,すぐにでも導入できる状況にある(写真1)。
データ・センター事業者にとってFCoEを導入するメリットは,インフラの運用・管理を簡素化し,装置コストを抑えられることである(図1)。具体的には,サーバー・スイッチ間のケーブル配線を大幅に簡素化できる。
LANとSANが分かれている現在の構成では,サーバーにはLANアダプタとHBAをそれぞれ2枚ずつ搭載する。2枚にするのは冗長構成のためだ。例えば,ラック内に10枚のサーバーがあると,スイッチとつなぐケーブルは40本。FCoE対応アダプタである「CNA」を使えば,ケーブルは半分の20本で済む。アダプタやスイッチも半数で済み,コストや消費電力を大きく減らせることになる。
このほか,異なるデータ・センター間でのストレージ通信にイーサネットが使える点を評価する事業者もある。「金融系などのユーザーは遠隔地のストレージにアクセスする場合,従来は専用回線でFCを使っていた。FCoEなら,既存の広域イーサネットのインフラが使える」(KDDI ソリューション商品企画本部 ソリューション商品企画部 データセンターグループリーダーの森純一課長)という。