Webサイトはもはや、社会生活の一部を支える情報基盤になった。最近は、動画や画像などを多用し、対話性を高めようとするWebサイトが増えている。だが、身体障害者の利用にまで配慮しているサイトは、まだまだ少ないのが実状だ。そうした中で、日本IBMがWebページのアクセシビリティ(閲覧保証性)を高める技術開発に取り組んでいる。社会基盤としてのWebサイトの役割をさらに高めるのが目的だ。

 日本IBMの東京基礎研究所アクセシビリティ・リサーチは2008年から、「ソーシャル・アクセシビリティ・プロジェクト」に取り組んでいる。同プロジェクトの中核をなすのが、アクセシビリティを向上させるためのWebサイト修正情報を一元管理するサーバーシステムだ。ボランティアなどプロジェクトの協力者が、Webサイトを実際に閲覧し、アクセシビリティ対応の有無や、掲示内容を読み上げる際の優先度を登録する(図1)。

図1●IBMが開発を進めている「ソーシャル・アクセシビリティー」の仕組み
アクセシビリティに問題があるWebサイトの修正データを外部データとして管理し、必要なユーザーだけに提供する
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 このサーバーシステムを基盤に、Webブラウザ用のプラグインソフトを組み合わせることで、Webサイト自体の改変を抑えつつ、身体障害者にとっても使いやすい利用状況を生み出す。プラグインソフトの一例が、2009年10月に開発が完了した、音声読み上げ用ソフトである。Firefoxのプラグインとして提供する。Webサイトの記述内容を、優先度が高いと設定された情報から読み上げる。

 Webサイトの内容を音声で読み上げるソフトは、これまでにもあった。それらの多くは、HTMLファイルの記述順に内容を音声に変えていく。だが、Webページの上部には、他のページへのリンクや広告バナーが置かれるのが一般的。結果、そのページ本来の内容が読み上げられるまで、何分も待たなくてはならなかった。そのため視覚障害者は、アクセシビリティを考慮した自治体や医療機関などの特定サイトにしかアクセスしなくなっているという。