セブン&アイ・ホールディングス 村田紀敏代表取締役社長兼COO
セブン&アイ・ホールディングス 村田紀敏代表取締役社長兼COO
(写真:丸毛 透)

 節約ムードが広がるなか,こだわる消費とこだわらない消費の二極化が進んでいる---。セブン&アイ・ホールディングスの村田紀敏代表取締役社長兼COOは,こだわらない消費を伸ばすには,店頭での「情報発信」が欠かせないと強調する。(聞き手は,多田 和市=ITpro「経営とIT新潮流」編集長)

昨年9月の「リーマン・ショック」に端を発した世界的な金融・経済危機は,消費者の購買行動をどのように変えましたか。

 消費者の収入面に直接影響が出始めたのは2009年春ごろからでしょうか。大手企業でもボーナス・カットが相次ぎ,消費者にはこれまで以上の節約感が出てきました。

 ただ,消費の飽和感は過去からずっと続いています。もの余りの中での消費ですから,何か買おうと思ったときに,家庭の中を見回すと同じようなものがいくらでもたまっています。それらを見直して,使えるものは使うというように節約の仕方が変わってきたように思います。

こだわる消費とこだわらない消費

 節約志向が慢性化するなかで,消費は「こだわる消費」と「こだわらない消費」の二極化が進んでいます。

 「こだわる消費」の対象になる商品とは,例えばカメラ好きにとっての高級一眼レフカメラのように,個人の生活感からくるこだわりの商品のことです。普段は節約していても,自分が価値を見いだしたものに対しては,価格は二の次になります。ですから,環境性能という付加価値を持ったハイブリット・カーのように,消費者が新たに価値を認める商品であれば,こうした景況感でも大きなマーケットを作ることができます。

 一方,「こだわらない消費」とは,生活を継続するうえで必要な消耗品や日用品などの購入のことです。この消費に対しては,価格志向が非常に強くなっています。

セブン&アイの主力分野は日用品や消耗品ですね。

 そうです。「こだわらない消費」の割合が大きいですね。この分野の商品はデフレ感が強い。しかも,今年の夏もそうでしたが,天候不順の影響を受けます。そこにどう手を打っていくかというと,商品の質の追求はもちろん必要ですが,もう1つ,売る側の質が求められると思うのです。