数あるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の中で、特定の趣味に精通した人たち、いわゆる“おたく”に特化したサービス「おたくま」を運営するのがシー・エス・ティ・エンターテインメントだ。同社の福島利和社長は、「将来的には各分野で活躍する人たちの登竜門のような存在にしたい」と語る。2010年春から始めるターゲティング広告で黒字化を目指すという福島社長に、事業戦略などを聞いた。(聞き手は島田 昇=日経コンピュータ)

「おたくま」とはどのようなサービスなのか。

 特定の趣味に精通した人々を対象にしたマッチングサービスだ。登録制を取っており、利用者は友人からの招待を受ける必要はない。どの分野の趣味に興味があるのかについて、いくつかの質問に対して答えることで利用者の属性が決まる。その属性に合致する人同士をマッチングさせることで、各種コミュニケーションが発生することになる。

 こうしたサービスは一般的にはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と呼ばれるが、当社は「ソーシャル・マッチング・サービス」と呼んでいる。属性を決めるための質問は、嗜好をより絞り込むために利用者が設定することもできる。

 2009年4月のサービス開始から約半年で、会員数は1万3500人になった。一般的なSNSと比べると、会員数は少なく映るかもしれない。しかし、そもそもが限られたターゲットに絞り込んだサービスなのだから、10万人単位になれば相当な価値を生むサービスになり得るはずだ。まずはコアになる感度が高い利用者を地道に集めながら、2011年までに50万人から100万人規模のサービスになることを目指していく。

なぜ、おたくに特化したサービスなのか。

 マンガや、アニメ、ゲームなどは日本が誇るべき文化である。この分野で成功しているポータル(玄関)サイトと呼べるべき存在がなかったので、これを作りたかったということが第一だ。有名なSNSなどでも同様のコミュニティはあるが、マンガやアニメなどの趣味を実名では語りづらく、別の場所で“隠れおたく”になっている人が多いように見受けられる。こうした趣味は細分化して、なかなか共通の趣味を持つ知り合いが見つけづらい状況になっているので、需要もあると判断した。

 一般には、オタク文化は完全な匿名で話し合われることが多いと想像されるのではないだろか。だが、匿名だけでは広がりが限定される。最初は匿名であったとしても、ある程度のコミュニケーションが発生してきたら、個々人の個性を出し合いながら関係性を深めていくことで、より深みのあるコミュニティへと成長できる。深みのあるコミュニティは、何となく1000万人いるコミュニティと比べ会員数が1桁2桁下回っていても、しっかりとしたマーケティングデータでありツールとなり得る。仮に広告を展開したら、その差は歴然だろう。

 また日本が誇るべき文化を扱うということは、同時に海外展開の道も見えてくることでもある。システムは最初から柔軟性を持てるように設計・開発したので、英語圏などにローカライズすることは簡単だ。海外で日本のマンガやアニメに興味のある人の造詣は想像以上に深く、ゆくゆくは彼ら彼女らも巻き込んだサービスにしていきたい。