写真●かつて“世界最速”を誇った国策スパコン「地球シミュレータ」(写真提供:海洋研究開発機構)
写真●かつて“世界最速”を誇った国策スパコン「地球シミュレータ」(写真提供:海洋研究開発機構)
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 政府の行政刷新会議は2009年11月13日、事業仕分けで、文部科学省が推進する次世代スーパーコンピュータ事業を事実上の「凍結」と判定した。「NECと日立製作所が今年5月に撤退し、大幅なシステムの仕様構成を変更しており見通しが不透明」などの判断が働いたためだ。

 これに対して、文科省の関係者から「長い目で見ると国内のIT業界にとって重大な損失」とする声が出ていたほか、研究者からも日本の国際競争力の低下を懸念する声が相次いで上がった。政府内でも、菅直人副総理・国家戦略相や仙谷由人行政刷新担当相らが、判定の見直しの可能性に言及するなど、国策スパコンの存廃を巡る議論は熱を帯びている。

 この国策スパコンは、かつて“世界最速”を誇った「地球シミュレータ」の後継機。毎秒1京回の浮動小数点数演算を行う「京速計算機」を、2012年をメドに完成させる予定だった。果たして、国策スパコンは不要か、あるいは必要か。必要だとしても、今の体制で継続することが正しいのか。百家争鳴の中、国策スパコンの行方を追う。

国策スパコン、復活の意義を問う

 凍結か復活か---。無駄な予算を判定する事業仕分けで事実上の凍結判定とされつつも、研究者たちの猛反発を受けて、当初の概算要求額より40億円減額の227億円で、2010年度の予算が復活した国家プロジェクト、次世代スーパーコンピュータ。しかし、総額約1200億円の同プロジェクトは、国民が納得する理由を伴って復活したのだろうか。事業仕分けで指摘された、凍結せざるを得ないとされた理由に対し、十分に納得できる説明がなされたのだろうか。識者と読者の声を通じて、改めて、「国策スパコン復活」の意義を問う。

揺れる事業仕分けの判定

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NECと日立の撤退の波紋

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